人材不足が叫ばれる状況の中、非正規雇用者の割合が高まっています。
特に、シニア世代や女性の非正規雇用者が増加傾向にあるというのが近年の大きな特徴です。
非正規雇用者が増加した背景として、1998年の金融危機を境に雇用率が低下したことも関係しますが、
近年では少子高齢化が進むことによる労働力人口の低下や「自分の都合の良い時間で働きたい」、
「家計の補助・育児と両立したい」という女性が多数存在していることが考えられます。
人材の確保が求められる昨今、 年々増え続ける非正規雇用者を効率的に活用することが重要とされています。
しかしながら、現時点で課題も多く残されています。
この記事では、非正規雇用者の割合が増加しているというデータを紹介するとともに、
非正規雇用者を効果的に活用するために企業が取り組むべき対策について解説します。
この数年、非正規雇用者の割合が継続して伸びていることをご存じでしょうか?
2019年度に厚生労働省が調べた統計によると、全体の雇用者数は5,660万人でした。
うち、正規雇用者数は3,494万人で前年比18万人の増加に対して、
非正規雇用者の人数は2,165万人で45万人増加しています。
トータルの雇用者数が伸びているため少しデータが読みづらい部分はありますが、
正規雇用者の伸び率と比較して非正規雇用者ののび率の方が明らかに高いことはお分かりいただけると思います。
この傾向は、昨年だけではなく何年にもわたって長く続いています。
労働者全体における非正規雇用者数の割合と人数は、以下のように推移しています。
平成24年:35.2%(+4万人)
平成25年:36.7%(+94万人)
平成26年:37.4%(+54万人)
平成27年:37.5%(+19万人)
平成28年:37.5%(+37万人)
平成29年:37.3%(+13万人)
平成30年:37.9%(+84万人)
令和1年:38.3%(+45万人)
平成26年以降は、ほぼ横ばい状態が続いていますが、
平成30年からまた非正規雇用者の割合の上昇率が高まっています。
また、この間ずっと非正規雇用者人数は増え続けていることもデータからは読み取れます。
参考:厚生労働省「非正規雇用」の現状と課題
https://www.mhlw.go.jp/content/000618709.pdf
近年の非正規雇用者の割合が増えているという状況について、大きな特徴を2点紹介します。
・1点目は、高齢者の割合が高まっていることです。
厚生労働省が発表している資料によると、令和元年の55~59歳の非正規雇用者数は、
436万人(非正規雇用者全体の20.2%)、65歳以上は389万人(全体の18.0%)となっています。
社会全体の高齢化や長寿化の流れに加え、継続雇用制度や定年制度の変更など、
企業での働き方が変化していることも大きな要因です。
・2点目は、全ての年代において女性の非正規雇用の割合が増えているということです。
特に年代が上がるほど非正規雇用の割合が増えていることから、
ファミリー世代の家計補助や老後の貯えなどの事情が背景に存在することが考えられます。
・3点目は、非正規での外国人雇用が増えている点が挙げられます。
非正規での外国人雇用については、外国人技能実習生制度の拡張など、
外国人受け入れのための制度が少しずつ改善されていることが要因として考えられます。
非正規雇用の割合が増加していることは、
高齢者や女性・外国人などの労働力を活用できているというポジティブな面もありますが、
ネガティブな面も考えられます。
というのも、非正規雇用として働いているうちの11.6%は「正社員として働く機会がなく、不本意」
で非正規雇用者として労働をしているという状況だからです。
参考:厚生労働省「非正規雇用」の現状と課題
https://www.mhlw.go.jp/content/000618709.pdf
また、正社員と非正規雇用者との間の格差については長く議論がされていますが、
未だに条件面においては課題が残されているためです。
この章では、企業が非正規雇用者を活用するために解決しなくてはならない課題について解説します。
正規雇用者と非正規雇用者との間の賃金・待遇の格差は、今も根強く残っています。
例えば、厚生労働省がまとめたデータによると54~59歳における正規雇用者の時給換算した賃金は2,499円ですが、
非正規雇用者は1,301円です。
あくまで平均値ですが、非正規雇用者は正規雇用者の52%の賃金しかもらっていないということになります。
また、有給休暇制度や福利厚生などの待遇面の格差もあります。
働き方改革では「同一労働同一賃金の原則」が示されていますが、
不公平感が強い賃金制度の場合非正規雇用者を継続して雇用できないかもしれません。
正規雇用者と非正規雇用者との違いは、研修や教育の違いにも現れます。
正規雇用者に対しては、スキルアップ研修や役職者研修・マナー研修・各種セミナーなど、
スキルを高めるための機会が設けられるのに対して、
非正規雇用者に対しては機会が設けられないケースが少なくありません。
厚生労働省のデータによると、正社員と非正規雇用者との研修の機会の違いは次の通りです。
|
計画的なOJT |
OFF-JT |
正社員 |
62.9% |
75.7% |
非正規雇用者 |
28.3% |
40.4% |
OJT=商談の同行や現場での作業研修など、実務を通じて研修をおこなうこと
OFF-JT=セミナーの受講やロールプレイングなど、実務を離れておこなう研修のこと
スキルアップの機会が得らえないことにより、非正規雇用者は正社員との間にますますスキル・知識の差が広がってしまい、
格差を埋めることが難しくなってしまいます。
正社員として働くスキルや知識を十分に持ったスタッフであっても、
労働条件への対応が難しいことから非正規雇用者として雇用されている人もいます。
例えば、育児中・介護中であったり、年齢により体力的にフルタイム勤務や会社への通勤が困難だったりする方のケースです。
これらの人材を有効活用するためには、労働条件の整備が必要です。
具体的に取れる対策は、次の通りです。
・テレワークや在宅勤務制度の活用
・時短勤務制度の活用
・多様な働き方(現場への直行直帰・フレックス勤務など)への対応
ただし、単に制度を導入するのみにしてしまうと、他の社員が不公平感を感じてしまったり、
評価制度が整備されていないことによりモチベーションが高まりにくかったりするなどのデメリットが生じてしまう恐れがあります。
制度として導入するためには、制度導入の目的を明らかにして、
雇用条件や評価制度を整えたうえで、就業規則や賃金規定などに反映させていく必要があります。
非正規雇用者の人数が増えていることや、
そのうちの一定の割合が「正社員として働きたい」と希望しているということは、
これらの人材をうまく活用できれば組織としての力を高められるということを意味します。
現在、大半の業界にて人手不足が声高に叫ばれている状況でもあり、
これらの労働力が活用できるか否かは企業の将来を左右するともいえます。
この章では、企業が非正規雇用者を活用するためのポイントを4点紹介します。
条件や状況の異なる労働者を、
同じ目的(売上のアップなど)に向かって力を合わせるためには、マネージャーの管理力が重要です。
例えば、非正規雇用者のスキルや知識を活かすために、
非正規雇用者からの提案やアイデアを積極的に活用したり、
正社員との差別をすることなく目標やビジョンを共有したりするなどの姿勢が不可欠です。
また、非正規雇用者から要望や相談があったときには、即座に答える姿勢も大切です。
これらを通じて、非正規雇用者が将来会社で活躍できるイメージを抱ける状態にすることが望ましいといえます。
会社に常時出勤できないスタッフの戦力を活かすためには、社内SNSなどのITツールの活用は不可欠です。
ITツールを効果的に活用することができれば、以下のメリットがあります。
・コミュニケーションが活性化し、チームとしてのまとまりが強くなる
・情報の伝達(業務の引継ぎや情報共有など)がスムーズになり、仕事の質が上がる
・オンライン上にデータが残るため、書類や情報を探す手間が省ける
例えば、低価格(1ライセンスあたり220円(税込み)~)で利用できるオンラインツール「JANDI」は、
チャットでのコミュニケーションや情報共有などがスマホ一つで簡単にできるツールです。
JANDIを導入した企業では、以下の効果が表れています。
・メールでのコミュニケーション82%減
・不要な会議29%減
・業務の生産性82%アップ
スマホやPCで手軽にコミュニケーションが取れることから、
必要なやり取りに絞って、おこなえるということです。
在宅勤務者やテレワーカー、時短勤務者との情報共有も手軽にできるようになります。
3-3. 社内の環境を整える
社内の労務環境を整えることも大切です。
例えば、育児スタッフ向けに社内託児所を設けたり、
小さな文字が見づらいシニアの労働者向けにマニュアルの文字を大きくしたりするなどの対策が考えられます。
また、テレワークや時短勤務を利用するスタッフに対して他の勤務者から不平が噴出しないように、
説明会などを通じて制度の目的を周知して理解を求めることも重要です。
特にテレワークや在宅勤務の制度を利用するスタッフの場合には、評価制度を整えることも重要です。
これらの制度を利用した場合、直接上司の目が届かなくなるため評価制度を整えることが大切です。
従来の評価制度をそのまま当てはめた場合、評価に対する制度に集中してしまい、
プロセスや勤務態度などが軽視されてしまう可能性があります。
例えば、上述のITツール「JANDI」をうまく活用することで、コミュニケーションを密に取ったり、
やることリストを管理して進捗状況をチェックしながら仕事を進めたりすることができます。
現在、少子高齢化が進むことによって労働力人口が減少し、人材不足が叫ばれていますが、
非正規雇用者の割合や人数は年々増加しています。
今後、人手不足の解消やスキルの高い人材を確保するために、
企業は非正規雇用者の人材をいかに有効活用できるか考えていく必要があります。
非正規雇用者は、低賃金の労働者というイメージがあり、今も正社員との賃金の格差は残っていますが、
優秀な人材を育てていくためにも制度や環境を整えることで、スキルを最大限に発揮してもらうことが重要です。
また、コミュニケーションの活性化・情報共有・評価制度を是正するための取り組みとして、
ITツールの活用などを積極的におこなうことも効果的です。