借用書を電子契約で作る方法|法的効力・印紙税・作成手順をやさしく解説
借用書を電子契約で交わしてよいのか、紙と同じ効力があるのか不安に感じている担当者は多くいます。改正民法と電子署名法の整備により、電子契約で作成した借用書は紙と同じ効力をもち、印紙税の節約や締結スピードの向上といった実務メリットも得られます。この記事では、法的な根拠から作成手順、注意点までを実務目線で整理します。
借用書は電子契約で作成できる

借用書を電子契約で交わして問題ないのか、まずは法律上の位置づけを確認しておきます。改正民法と電子署名法という2つの法律により、電子契約で作成した借用書も紙と同じ効力をもちます。金銭消費貸借契約書との違いも合わせて、全体像を整理しておきましょう。
改正民法が認める電子の借用書
2020年4月に施行された改正民法では、第587条の2第4項に、電磁的記録による消費貸借も書面とみなすという規定が新設されました。条文は次のとおりです。
消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
電磁的記録とは、PDFや電子契約サービス上のデータなど、コンピュータで読み取れる形式の記録のことです。つまり、借用書を電子データで交わしても紙と同じ扱いになることが、法律で明確に認められています。
改正前は、お金の貸し借りは実際に現金が渡されたときにはじめて成立するとされ、書面で交わしたときの位置づけは不明確でした。改正後は電子データも書面と同じ扱いと明記されたため、紙でなければ無効ではないかという不安をもたずに電子化に踏み切れます。
電子署名法に基づく電子借用書の法的効力
電子契約で作成した借用書を裁判で証拠として使えるかを支えるのが、電子署名法第3条です。本人による電子署名が付された電磁的記録は、紙の文書と同じく真正に成立したものと推定されます。これは、契約書の作成について争いが生じても、相手方が反証しない限り本人が作ったものとして扱われる、という意味です。結果として、貸主側の立証負担は大きく軽減されます。
電子署名には大きく2種類あります。
- 事業者署名型:サービス側が代わりに署名を付与する方式
- 当事者署名型:当事者が自身の電子証明書で署名する方式
少額の借用書であれば事業者署名型で実務上は十分ですが、金額の大きい取引では当事者署名型を選ぶことで、本人性の証明力をさらに高められます。
借用書と金銭消費貸借契約書の違い
どちらもお金の貸し借りを記録するための書類ですが、誰が署名するかに違いがあります。借用書は借主のみが署名して貸主に渡す書類で、金銭消費貸借契約書は貸主と借主の双方が署名し、それぞれ1通ずつ保管する契約書です。
実務では、個人間や少額のやり取りには借用書、企業間の融資や金額の大きい取引には金銭消費貸借契約書、という使い分けが定着しています。電子契約にしても紙と同じ効力をもちますが、双方の署名が揃っているほうが証明力は強くなるため、金額や紛争リスクに応じて、どちらの書類で交わすかを先に決めておきましょう。
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借用書を電子契約にする3つのメリット

借用書を電子契約に切り替えると、コストや締結スピード、証拠管理の3つで実務に効く変化が生まれます。
- 印紙税が不要になりコストを抑えられる
- 郵送・押印を省いて締結スピードを上げられる
- 改ざん防止と検索性で証拠管理がしやすい
それぞれの内容を、紙の借用書と比べながら見ていきましょう。
印紙税が不要になりコストを抑えられる
紙の借用書には、印紙税法上の課税文書(第1号文書)として収入印紙の貼付が必要です。借入金額に応じて、次のように税額が決まっています。
|
借入金額 |
印紙税額 |
|---|---|
|
1万円未満 |
非課税 |
|
10万円以下 |
200円 |
|
10万円超〜50万円以下 |
400円 |
|
50万円超〜100万円以下 |
1,000円 |
|
100万円超〜500万円以下 |
2,000円 |
|
500万円超〜1,000万円以下 |
1万円 |
|
1,000万円超〜5,000万円以下 |
2万円 |
|
5,000万円超〜1億円以下 |
6万円 |
一方、電子契約で交わす借用書は印紙税の対象外です。印紙税法基本通達第44条で課税文書の作成が紙への記載と交付を前提とされており、電子データの送信はこの要件を満たさないと整理されているためです。借用書を電子契約にするだけで、収入印紙のコストはゼロになります。
郵送・押印を省いて締結スピードを上げられる
紙の借用書では、貸主が文面を作成して印刷し、押印してから借主に郵送、借主が記名捺印してから返送、という往復が必要です。郵送日数も含めると、締結まで3日〜1週間程度かかるのが一般的です。
電子契約に切り替えれば、貸主がテンプレートに必要事項を入力して借主に送信し、借主はスマートフォンやPCから署名する、という流れに集約されます。社内決裁を含めても即日〜数時間以内で締結が完了するため、急ぎの貸付や取引先からの依頼にも遅れずに対応できます。
改ざん防止と検索性で証拠管理がしやすい
電子契約の借用書には、署名時にタイムスタンプとアクセスログが自動で残ります。タイムスタンプは、ある時点で文書が存在したことと、それ以降に変更されていないことを第三者機関が証明する仕組みです。紙の文書では実現しにくい強みといえます。
加えて、契約管理画面から契約相手や金額、締結日で検索できるため、過去の借用書を探し出す手間もかかりません。改ざん防止と検索性が両立しており、税務調査や監査時の対応コストも抑えられます。
合わせて読みたい:電子契約のメリット8選!仕組み・法律・導入まで“今さら聞けない疑問を解消
借用書を電子契約で作成する流れ

電子契約で借用書を作成するときの流れを、実務で迷いやすい順に4ステップで整理します。
- ステップ1:電子契約サービスを選ぶ
- ステップ2:借用書に必要な記載事項をそろえる
- ステップ3:相手方に署名依頼を送り締結する
- ステップ4:電子帳簿保存法の要件に沿って保管する
サービス選定から保管まで、紙の作業と何が変わるかを意識しながら、上から順に進めていきましょう。
ステップ1:電子契約サービスを選ぶ
最初に、自社や取引内容に合った電子契約サービスを選びます。借用書のように1〜数件の少量利用であれば、無料プランや少件数向けのライトプランで十分カバーできるサービスもあります。
選定のポイントは、電子帳簿保存法対応・タイムスタンプ・検索機能が標準で備わっていることです。加えて、相手方が登録なしでメール受信から署名できる事業者署名型に対応していると、貸主と借主の双方の負担を抑えやすくなります。
ステップ2:借用書に必要な記載事項をそろえる
次に、借用書として法的効力を発揮させるための記載事項をそろえます。紙の借用書と同じく、漏れなく書いておくことで、証拠としての信頼性が高まります。
借用書に盛り込んでおきたい主な項目は次のとおりです。
- 借入金額
- 借入日
- 返済方法
- 返済期限
- 利息の定め
- 遅延損害金の定め
- 期限の利益喪失条項
- 借用書の作成日
- 借主の氏名・住所
- 連帯保証人(必要があれば)
- 貸主と借主の電子署名
なかでも期限の利益喪失条項は、返済が滞ったときに残債を一括請求できる根拠になります。テンプレート任せにせず、抜けがないか自分の目でも確認しておきましょう。
ステップ3:相手方に署名依頼を送り締結する
内容を入力した借用書は、電子契約サービスから借主のメールアドレス宛てに送信します。借主は受信メールのリンクを開き、本人確認のための認証を経たうえで、画面上で署名を行います。
署名が完了するとタイムスタンプとアクセスログが自動で付与され、完成した借用書のPDFが貸主と借主の双方に共有されます。送信から締結までを画面上で追えるため、催促やステータス確認の手間もかかりません。
ステップ4:電子帳簿保存法の要件に沿って保管する
締結後の借用書は、電子帳簿保存法の保存要件を満たした形で残しておく必要があります。電子取引でやり取りしたデータは、紙に出力するだけでは保存とみなされません。
具体的には、改ざんを防ぐためのタイムスタンプや訂正・削除履歴で真実性を確保し、取引日・金額・取引先の3項目で検索できる状態にしておくことが求められます。これらは多くの電子契約サービスが標準機能として備えているため、サービス上で保管しておけば社内ルールの整備だけで対応しやすくなります。
合わせて読みたい:電子契約書の保管方法を徹底解説|電子帳簿保存法の要件と失敗しない運用ルール
借用書を電子契約にするときの注意点

メリットの多い電子契約ですが、借用書という文書の性質上、効力を確実に担保するために押さえておきたい注意点もあります。サービスを使えばすべて自動で守られるわけではないため、4つの論点を運用ルールに反映しておきましょう。
相手方から電子契約での合意を得ておく
電子契約で借用書を交わすには、相手方の同意が前提になります。借主側に紙志向や電子契約への抵抗感があるとトラブルの種になりかねないため、契約前に電子契約で進める旨を明示し、合意をとっておきましょう。
合意のとり方として手軽なのは、メールやチャットに電子契約で締結する旨を一文添えてやり取りを残しておく方法です。金額の大きい取引であれば、電子契約利用に関する覚書を別途交わしておくと、より確実です。
本人確認となりすまし対策をとる
電子契約は対面と違い、相手の顔を見ずに署名を進められるため、なりすましのリスクをあらかじめ想定しておく必要があります。多くのサービスはメールアドレスとパスワードに加えてSMS認証を組み合わせる多要素認証に対応しているので、初期設定で必ず有効にしておきましょう。
高額の借用書では、ビデオ通話での本人確認や身分証明書の提示を組み合わせるのも有効です。事業者署名型と当事者署名型のどちらを使うかも、本人性の担保レベルに合わせて選び分けてください。
タイムスタンプで非改ざん性を担保する
電子データは紙と違い、改ざんが起きていないことを目視で確かめられません。そのため、タイムスタンプとアクセスログで非改ざん性を保証する仕組みが欠かせません。タイムスタンプは時刻認証局が発行する電子的な押印で、ある時点で文書が存在し、それ以降変更されていないことを第三者の立場で証明します。
電子契約サービスを選ぶ際は、タイムスタンプが標準で付与されるかを必ず確認しましょう。長期保存を見据えるなら、有効期限の延長機能(長期署名)に対応しているかも合わせて確認しておきましょう。
合わせて読みたい:電子帳簿保存法のタイムスタンプとは?仕組み・要件・不要なケース分かりやすく解説
借用書ならではの法的論点を押さえる
借用書は金銭の貸し借りに関する文書のため、利息制限法と制限行為能力者の2つにはとくに注意が必要です。利息制限法では元本に応じた上限金利が定められており、これを超える利率を借用書に記載しても、超過分は無効になります。
もうひとつ、未成年者や成年被後見人など制限行為能力者との契約は、原則として後から取り消されることがあります。電子契約サービスの本人確認は年齢や法的判断能力までは把握できないため、相手の年齢確認や保護者の同意取得は別途運用で担保する必要があります。
借用書の電子契約に関するよくある質問
最後に、借用書を電子契約で扱うときによく寄せられる3つの疑問をまとめておきます。個人間で使えるかや公正証書との使い分け、紙で交わした借用書を後から電子化する流れなど、実務で迷いやすい部分を整理しておきましょう。
個人間の借用書も電子契約にできる?
個人間の借用書も、電子契約で問題なく作成できます。民法第587条の2第4項は当事者の属性を問わず適用されるため、企業間だけでなく親族間や友人間の貸し借りでも、電子の借用書は紙と同じ効力をもちます。
ただし、電子契約サービスの中には法人向けに料金が組まれているものもあります。個人で利用するなら、無料プランや個人プランが用意されているサービスを選ぶのがおすすめです。スマートフォンだけで完結するサービスを選べば、相手方にも負担をかけずに済みます。
強制執行に備えたいなら公正証書はどう扱う?
貸金の取り立てを裁判なしで進めたいなら、公正証書として作成する方法があります。執行受諾文言付きの公正証書があれば、借主が返済を怠ったときに裁判を経ずに強制執行に移れます。
現状の公正証書は公証役場で作成する必要があり、電子契約サービス上では完結しません。高額の貸付や紛争リスクが高い案件は紙の公正証書、それ以外は電子契約、という形での使い分けが現実的です。なお、公正証書の電子化は法改正により段階的に進められています。
すでに紙で交わした借用書を電子化してもよい?
紙で交わした借用書を、後からスキャンして電子データ化することは可能です。ただし、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
まず、紙の借用書を作成した時点で印紙税の納税義務はすでに発生しているため、貼付した収入印紙のコストを電子化によって取り戻すことはできません。また、スキャナ保存制度に沿って解像度や検索要件を満たす形で保存する必要があります。これから新規に交わす借用書を電子化する流れと、既存の紙借用書を電子データ化する流れは別物として扱いましょう。
まとめ|借用書の電子契約で契約管理を効率化する
借用書は、改正民法と電子署名法を根拠に電子契約でも紙と同じ効力で作成でき、印紙税の削減や締結スピードの向上、証拠管理の強化といった実務上のメリットも得られます。サービス選定から保管までの4ステップを押さえ、相手方の合意取得や本人確認、利息制限法といった注意点を運用ルールに織り込めば、はじめての電子化でも迷わず進められます。

