タイムカードは、従業員の労働時間を集計するために欠かせない情報源です。しかし、出退勤時のタイムカードを押し忘れてしまうこともあるでしょう。常習的に繰り返している従業員もいるかもしれません。
タイムカードの押し忘れにより正確な労働時間が把握できないと、企業側はさまざまなリスクを抱えることになり、人事・労務担当者は管理コストが増えます。
本記事では、タイムカードの押し忘れをなくすための対策やその際の注意点について解説します。
この記事の目次
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タイムカードの押し忘れが企業にもたらすリスク
タイムカードの押し忘れにより正しい労働時間が算出できない場合、適切な給与の支払いや時間外労働の遵守に問題が発生する可能性があります。
正確な給与計算ができない
出退勤時間が適切に記録されていないと給与計算に支障をきたし、本来支払うべき給与との間に乖離を生じてしまうことがあります。これに気づかずにいると、後になって従業員から残業代を請求され、トラブルに発展するケースもあります。
従業員が賃金未払いで労働基準監督署に相談をすれば、当時の労働時間に関する事実確認や資料作成に手間を取られ、また労働基準監督署からの指導にも対応する必要が生じるでしょう。
タイムカードは労働時間を把握するための重要な書類であり、最後の記録をした日から3年間の保存義務があります。労働基準監督署からの調査に応じ、従業員とのトラブルを回避するためにも適切に管理・保管することが必要です。
労働時間を適切に捕捉できない
タイムカードの押し忘れにより正しい労働時間を把握できないと、労働時間の上限規制を遵守できないケースが発生するかもしれません。
2019年4月、時間外労働の上限規制が導入され、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間以内と定められました。臨時的な特別の事情がある場合、この上限を超えることができますが、詳しくは残業100時間の関連記事をご覧ください。
タイムカードの押し忘れが多く、正確な労働時間を捕捉していないと、労働基準法で定める時間外労働の上限を超えてしまうリスクがあります。
労働基準法に違反すると「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されます。
タイムカードの押し忘れをなくすための対策
タイムカードの押し忘れ対策として、打刻をする手間を減らす、思い出せるようにする、ペナルティを設けるなどさまざまな方法が考えられますが、最も効率的なのは勤怠管理システムを導入することです。
タイムレコーダーの設置場所を工夫する
タイムカードの押し忘れ対策としてまず実施したいのが、タイムレコーダーの設置場所の改善です。タイムレコーダーは従業員が出退勤時に必ず通過する場所に設置するなど、自然と目に留まるようにする工夫が必要です。
カードの置き場所を2カ所にする方法もあります。タイムカードに打刻する前後で置き場所を変えるルールにしておけば、押し忘れているタイムカードが一目瞭然になります。
押し忘れの早期発見ができれば、出退勤時間を自己申告してもらい、速やかに正しい記録に修正することができるでしょう。
ポスターで注意喚起をする
掲示板など分かりやすい場所に、タイムカードの押し忘れについての注意喚起をするポスターを貼っておく方法も有効です。タイムカードの押し忘れに対して何らかのペナルティを設けている場合、その内容を記載しておくと押し忘れの抑止力になるでしょう。
また、掲示板以外にも目立つ場所はいくつか考えられるため、休憩室や食堂、トイレ、喫煙所など多くの人が利用するスペースごとにポスターを貼っておくと、より効果的です。
タイムカードの管理担当者を決める
各部署ごとにタイムカードの管理担当者を決め、毎朝打刻をしたかチェックするようにすれば、打ち忘れがあってもすぐに発見できる仕組みが作れます。
交代制で当番を決めておけば、特定の管理者だけに負担がかかるのを避けられるのと同時に、従業員全員がタイムカードへの意識を変えるきっかけとすることができるでしょう。
ペナルティを設ける
タイムカードの押し忘れに簡易なペナルティを設ける方法もあります。タイムカードを押し忘れでペナルティが課されると、それが苦い思い出として強く印象に残り、今後の押し忘れを防止するのに役立ちます。
しかし、そのようなショックも時間が経てば次第に薄れていくため、ペナルティは根本的な解決にはならない可能性があります。
また、ペナルティとして定める内容には注意が必要で、欠勤扱いにするなど法律上認められていないものがあるため、労働基準法に違反していないか考慮しなければなりません。
勤怠管理システムを導入する
タイムカードの押し忘れに大きな効果を期待できるものとして、勤怠管理システムがあります。勤怠管理システムはスマホなどからストレスなく打刻できるのが魅力で、ほかにもパソコンやタブレット、ICカードなどを用いた方法があります。
近年、リモートワークなど多様な働き方増加していますが、勤怠管理システムならそのようなケースにも柔軟に対応できます。
またスマホでの打刻が可能なら、会社が近づいたときスマホに通知が来るようにリマインドしておき、そのままの流れでスムーズに出勤の記録をすることもできるでしょう。
退勤時もうまく場所や時間でリマインドの設定をしておけば、記録忘れの防止・早期発見ができ、システムからストレスなく操作ができるでしょう。
さらに、勤怠管理システムは従業員だけでなく、管理者にとっても有益であり、押し忘れチェックや稼働時間の集計が効率化するため、業務の生産性がアップします。
タイムカードを押し忘れたときの処分と注意点
タイムカード押し忘れに対し、ペナルティとしての処分を設ける際には、労働基準法などの法律に注意することが必要です。
欠勤扱いにはできない
タイムカードの押し忘れに対して、ペナルティとして欠勤(無給)扱いにすることは労働基準法に違反する可能性があります。
労働基準法第24条では、以下のように定められています。
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
タイムカードの押し忘れを常習的に繰り返しているような場合でも、実際に出勤して労働をしている限り、これを欠勤扱いにするのは適切ではありません。
タイムカードの押し忘れを理由に賃金を支払わないのは、明らかな労働基準法違反となるため、注意が必要です。
減給処分は注意して実施する
タイムカードの押し忘れに対する減給処分は、条件を満たせば設定することが可能です。
ひとつは、事前に就業規則で定められていることが必要です。従業員が守るべきルールとしての服務規律に、出退勤時のタイムカード打刻が必要である旨を記載しておきます。また懲戒規定としてタイムカード押し忘れに関する減給についても項目を設けておきましょう。
もうひとつの条件は、減給額が法律の定める上限を超えないことです。労働基準法91条には減給に関する項目が、以下のように定められています。
- 1回の減給額:平均賃金の1日分の半額
- 減給の総額:一賃金支払期の賃金総額の10分の1
このようにすればタイムカードの押し忘れに減給処分のペナルティを課すことができますが、ペナルティの適用には十分な注意が必要です。
たまたま1回の押し忘れがあっただけで直ちにペナルティを適用するなどの対応は、従業員のモチベーションを下げるでしょう。また、労働契約法15条なども考慮すると、従業員のルール違反が悪質なものでないかぎりは、ペナルティが裁判で無効であると判断される可能性もあります。
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする
まとめ
本記事では、タイムカードの押し忘れが企業にもたらすリスクを再確認するとともに、その対策や注意点について解説しました。
タイムカードの押し忘れをなくすのに効果的なのが、勤怠管理システムの導入です。紙のタイムカードからデジタル化することでタイムカードを押す側も管理する側も大きく手間が省け、全体として生産性が上がる期待が持てます。
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