月の残業100時間は違法になる?長時間労働に向けた対策について解説

働き方改革
勤怠管理

近年、働き方改革が推進され、日本の労働環境は転換期を迎えています。

2019年から働き方改革関連法が施行され、長時間労働を改善するため「時間外労働の上限規制」が設けられ、物議を醸しました。

これまで以上に長時間労働や残業には厳しい目が向けられることになります。

そこで、本記事では「残業100時間」をテーマとしつつ、労働基準法における労働時間の考え方についての基礎や、その対策について考えます。

労働者としての従業員のかたも、人事労務の担当者のかたも、ぜひ参考にしてください。

この記事の目次

月の残業100時間は違法になる?

残業 100時間
結論から述べると、月100時間の残業は原則として違法です。

2019年4月に施行された働き方改革関連法では残業時間(時間外労働)の上限規制が設けられ、たとえ臨時的な特別な事情があったとしても、残業時間を100時間未満とすることが規定されました。

法改正以前、残業時間の上限に関しては、厚生労働大臣の告示レベルで定められており、罰則による強制力はありませんでした。しかし、今回の法改正によって明確に法律として規定され、一部の例外を除いて、原則月100時間を超えることはできなくなったのです。

以下、労働時間に関連する法定労働時間や36協定、また過労死ラインについて触れながら、より噛み砕いて説明します。

労働基準法における労働時間について

残業 100時間

月100時間の残業は違法であることを述べましたが、これを具体的に理解するための内容について説明します。

  • 法定労働時間と36協定
  • 「時間外労働」と「残業」の違い
  • 特別の事情があるケースにおける残業時間
  • 残業100時間は過労死ラインを超える


では、それぞれ見ていきましょう。

法定労働時間と36協定

労働基準法では、労働時間が以下のように定められています。

  • 1日8時間および1週40時間以内
  • 毎週少なくとも1回の休日


これが法定労働時間です。そして、この法定労働時間を超えて従業員に時間外労働をさせる場合、労働基準法第36条に基づく労使協定(いわゆる36協定)を締結する必要があります。

36協定では、時間外労働を行なう業務の種類や時間外労働の上限などについて取り決めなければなません。

「時間外労働」と「残業」の違い

ここで時間外労働と残業について、正確に理解しておきましょう。

「残業」と聞くと、会社で定められた「所定労働時間」を超える時間であるとイメージするかもしれません。しかし、法律上の「時間外労働」とは、前述の通り、労働基準法が定める「法定労働時間」(1日8時間・1週40時間以内)を超える時間を指します。

例えば、始業時刻が9:00、就業時刻が17:30(休憩時間が12:00〜13:00)と定められている会社の場合、所定労働時間は7時間30分となります。

このような会社で18:00まで仕事をすると、いわゆる「残業」は30分となりますが、法律上の「時間外労働」(1日8時間)には該当しません。

この記事では、時間外労働と残業時間を明確に区別していませんが、厳密にはこのような違いがあることを理解しておいてください。

特別の事情があるケースにおける残業時間

36協定を結ぶと時間外労働が可能となることを説明しましたが、この時間外労働には、原則として月45時間・年360時間という上限があります。

そして、臨時的な特別の事情があり、かつ労使が合意する場合(特別条項)においては、この上限を超えることが許されるのですが、以下の項目を守ることが条件です。

  • 時間外労働が年720時間
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働と休⽇労働の合計について、「2か月平均」「3か⽉平均」「4か⽉平均」「5か⽉平均「6か⽉平均」が全て1⽉当たり80時間以内
  • 時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは、年6か⽉が限度


ここで「月100時間未満」(休日労働を含む)が登場することが分かります。上記に違反した場合、罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科される可能性があります。

残業100時間は過労死ラインを超える

一般的に過労死ラインは、月80時間を指します。残業時間80時間超えは、過大な業務負荷から疲労が蓄積し、過労死のリスクが高まる水準とされているのです。

過労死が認められれば労災認定されますが、死亡と業務の関連性を推定する残業時間の基準として以下のように定められています。

  • おおむね月100時間以上
  • 2〜6か月にわたっておおむね80時間以上


このように過労死を推定する残業時間としても「月100時間」が出てきます。このような状況が続けば、身体的・精神的に重篤な健康被害を招くリスクが高まります。

月の残業100時間とはどのような状況か

残業 100時間

月の残業が100時間に達する状況は、極めて過酷な労働条件に置かれていることを意味します。では、実際にシミュレーションしてみましょう。

仮に月に100時間の残業を25日間の出勤日数に分けると、1日あたりの残業時間は平均して4時間になります。法定労働時間が1日8時間であることを考慮すると、従業員は1日あたり平均12時間働いていることになります。

月の出勤日数が25日間なので、週に1回程度の休日はある想定です。しかし、休日以外は毎日12時間働きます。週6日間、9時から22時(1時間の休憩)まで働くようなものです。当然、通勤時間もあるため、自宅から会社への移動に片道で1時間かかる場合、8時に家を出て23時に帰宅するような毎日になります。

このような状況では自分のプライベートな趣味や、家族との団らんにあてる時間がほとんどないことになるでしょう。精神的にも体力的にも疲労が蓄積しやすく、健康被害に発生するリスクがあることは想像に難くないでしょう。

月の残業100時間となりやすい環境

残業 100時間

以下のような環境下においては、長時間労働が慢性化しやすい傾向にあります。

  • 慢性的に人手不足である
  • 長時間労働を美徳とみなす風潮


それぞれについて説明します。

慢性的に人手不足である

慢性的な人手不足は、月100時間残業など長時間労働を余儀なくされる主な要因です。

業務量に見合うだけの人員が確保できていないと、どれほど能力が高い従業員であっても、彼らの労働能力には限界があり、結果として業務を時間内に完了させることが困難になります。

新たな人材の採用には、教育コストを考慮しなければならず、短期的に見れば既存の従業員に残業をさせる方がコストが低いと判断されやすいかもしれません。

しかし、このような考えは従業員の長時間労働を招き、健康被害を発生させるリスクがあります。また、長期的には従業員の満足度や生産性の低下に繋がり、組織全体のパフォーマンスへの悪影響を及ぼす恐れもあるでしょう。

長時間労働を美徳とみなす風潮

残念なことですが、残業を良しとする風潮は、現在の日本でもいまだに見受けられます。

このような旧態依然とした文化が根付く会社では、時間をかけて仕事に取り組むことが献身的であると評価されます。従業員は仕事の質や成果よりも、勤務時間の長さによって価値を判断されるのです。

残業が常態化し、それが職場の標準という雰囲気となることで、従業員は帰宅することを躊躇するようになります。特に、上司が長時間働いている場合、部下は帰りにくい雰囲気を感じ、無意識のうちに過剰な労働時間に巻き込まれてしまうのでしょう。

しかし、時代の変遷と共に、長時間労働に対する社会的意識は変化しています。

過労死や精神疾患など、長時間労働による健康被害が社会問題として認識されるようになり、「ワークライフバランス」の重要性が高まっているのです。この流れの中で、「働き方改革」が進められ、長時間労働はもはや美徳ではなく、改善すべき課題となっています。

残業100時間など長時間労働への対策

残業 100時間

長時間労働を是正するには、個々の従業員側、そして会社側と双方からアプローチすることが重要です。

とりわけ、既に長時間労働が常態化している会社は、システム導入など具体的な改善に向けた取り組みが求められます。

従業員側の取り組み

真面目で責任感が強い従業員ほど、無意識のうちにオーバーワークの罠にはまりやすく、心身の健康を損なうリスクが高まります。このため、日常的な健康管理に加えて、自己の労働状況を客観的な基準で評価することが大切です。

労働状況の評価とは、例えば、作業効率の改善、業務の優先順位付け、必要に応じて上司や人事部門への相談などが挙げられます。

また、家族や友人など、周囲の人々からのフィードバックも貴重です。身近な人というのは往々にして、従業員自身が気づかない疲労のサインや心身の変化に気づいています。

周囲の人々からの指摘や心配の声に耳を傾け、必要に応じて働き方を見直すことも、オーバーワークから抜け出すためのひとつの方法です。

さらに、自身が違法な残業に従事していないか、適切な残業代が支払われているかどうかもチェックしておきましょう。労働法に基づく権利を理解し、必要に応じて法的なアドバイスを求めることも、自己防衛の一環となります。

会社側の取り組み

長時間労働に対する会社側の対策は、不必要な労働時間の削減に集約されます。

残業時間の管理体制を見直し、適正な労働時間で働くという意識を、従業員だけでなく管理職にも根付かせることが不可欠です。そのためには、例えば、以下のような取り組みを行なうことが有効です。

  • 残業を許可制とする
  • 残業時間の目標設定を評価基準に組み込む
  • 業務効率化のための会議を定期開催する


また、就業規則の見直しも、時として必要です。残業時間の上限設定や、必要な残業を行う際の手続きを明確に規定することで、残業体系の運用をスムーズにし、法律違反のリスクを避けるようにします。

このような対策を後押しするには、勤怠管理システムの導入がおすすめです。

勤怠管理システムなら、従業員の労働時間や残業時間を自動で集計できます。タイムカードシステムと比較して、自動集計機能を備えたシステムは、時間の作業を大幅に削減し、かつ正確なデータに基づいた管理を可能とします。

また、集計作業がリアルタイムで行われることにより、残業時間の超過や長時間労働を即座に把握し、必要な対策を講じることができるようになります。

このように、勤怠管理システムの導入で時間外労働の上限規制に対応し、従業員の健康と企業の法令遵守を同時に保証することができます。

まとめ:勤怠管理システムで労働時間を見える化する

本記事では、残業100時間に焦点をあて、その違法性や対策について解説しました。

人事労務の担当者は、従業員の労働時間の管理を正確かつ適切に行なう必要があります。労働時間の管理は、従業員が心身ともに健康で快適に仕事をするための基礎をなします。

このような労働時間、残業時間のスムーズな管理には、勤怠管理システムの導入が有効です。多くの導入実績のある「VWS勤怠」で、勤怠管理を効率化してみませんか。

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