近年、社内副業が注目されています。
社内副業とは、スタッフが業務時間内において、ほかの部署で働くことを認める制度です。
社内副業は、ニューノーマル時代に適した全く新しい考え方であり、運用方法もさまざまであるため、なかなか具体的にイメージするのは難しいと思います
従来から、社員がキャリアパスの課程で複数の部署や職務を経験するジョブローテーション制度は存在しますが、社内副業とどのように異なるのでしょうか?
今回の記事では、そんな社内副業という働き方について詳しく解説します。
社内副業とは、事業部や部署など社内における自分自身の所属するポジションに籍を置きながら、別の事業部や部署の業務に携わることです。
2021年時点では、一部の大手企業が社内副業を正式に制度として導入する動きがあり、注目を集めています。
従来のジョブローテーション制度が数年ごとに部署を異動する制度であるのに対して、社内副業制度は部署を固定したまま、社員本人が希望する部署で仕事ができる制度です。
期間や割合に上限を設けて、本来の部署での業務とのバランスを調整しながら導入されるケースが多く見られます。
ただし、社内副業の定義や具体的な働き方に関しては、企業ごとにそれぞれ異なります。
社内副業は、まだ注目されはじめて間もない制度でもあるため、具体的にどのような制度なのかイメージしづらいのではないでしょうか?
しかし、社内副業を導入した場合のメリットを知ることで、どのような目的で制度が運用されるのかの輪郭を掴んでいただけると思います。
この章では、社内副業の4つのメリットを解説します。
社内副業における1点目のメリットは、社員のスキルアップです。
単一の事務所にとどまるよりも、さまざまな部署やチームを経験することで、スキルアップすることが可能です。
社内の副業先で、本来の部署とは異なる上司や同僚と一緒に仕事をすることによって得られる刺激もあるでしょう。
また、ジョブローテーション制度とは異なり、元の部署のキャリアは継続されるため、専門性が身につかないという不安もありません。
さらに、技術・知識のスキルアップだけなく、会社を多面的にみることで、企業のビジョンや理念をより深く理解できるという点もあります。
2点目のメリットは、社員のモチベーションアップです。
社内副業は、希望する社員に対して適用される制度です。
学習意欲の高い社員や現在の部署で思うように結果が残せてない社員、今の業務にマンネリを感じている社員などにとって、新たな業務を担当できるとてもよい機会になります。
3点目のメリットは、中・長期的な視点で見た場合に、以下2つの観点から業務効率の改善にも期待できます。
・社員の成長
社員は、社内の複数の業務を担当することで、商品・サービスに関する知識を深められます。
一つの部署で学ぶ場合、知識は局地的なものになりがちですが、他の部署を経験することでサービスの流れがイメージしやすくなるためです。
・組織としての最適化
社員が持ち場を離れ、新たな知識を得ることで、元の部署と移動先の部署の両方で知識の共有化を図る必要性が生じます。
結果的に、仕事の属人化を解消し、組織として健全な形になります。
また、業務改善により企業として継続的に利益が上がりやすい体制の構築が可能です。
4点目のメリットは、セキュリティの向上です。
従来であれば、特定の部署で人材が不足している場合、派遣社員を雇用したり仕事を外注したりしていました。
その場合、必然的に外部の人材に対して社内データをシェアすることになるため、セキュリティ面で不安が生じます。
それに引き換え、社内副業の制度を利用すれば、社内の人材を活用できます。
与信の照会や秘密保持契約の締結などをあらためておこなう必要がなく、間接部門のスタッフの手間を軽減することが可能です。
4つの側面から社内副業のメリットを紹介しましたが、社内副業には課題もあります。
課題をいかに克服して導入するのかが、業務最適化への大きなポイントになるので、ぜひチェックしてください。
立候補制・応募制で希望者のみに限定したばあいであっても、二つの部署を掛け持ちで勤務することが社員の負荷になるのは間違いありません。
社内応募制度は、労働基準法の勤務時間内でおこなわれるため、残業時間が急激に増えるなどの定量的な負担増はありませんが、
社員は複数の業務を同時進行で覚えなくてはなりません。
さらに、本人だけではなく周囲のスタッフについても社内副業で来るスタッフのために、
研修・ミーティング・業務の引継ぎなどのスケジュールを調整する必要があります。
本所属以外の部署での仕事をどのように評価し、報酬を支払うべきかをあらかじめ明確にしておきましょう。
たとえば、社内副業制度を利用するスタッフに対して、一定の割増賃金を支払うなどの対応をとっている企業もあります。
すでに社内副業制度を導入している企業でも、評価制度についての考え方はマチマチであり、評価体系の取り方によって企業の姿勢が問われる可能性があります。
社内副業の制度を導入すると、対象の社員にとっては指示系統が2か所になります(直属の上司と社内副業先の上司)。
したがって、両者の指示が食い違ったときには、担当スタッフが混乱してしまったり、板挟みにあってしまったりする可能性があります。
このようなリスクを防ぐためには、管理職同士で日ごろから活発にコミュニケーションを取って方向性を揃えておく必要があります。
また、方向性が食い違ったときにどちらの意見を優先するのかをあらかじめ決定しておくことで、担当スタッフの迷いを軽減することが可能です。
社内副業は、以下のメリットが期待できます。
・人材のスキルを最大限に引き出させる
・スタッフのモチベーションを高められる
・業務効率化
・セキュリティ面の対策
一部の大手企業で始まったばかりの制度であり、具体的な導入手順や働き方も企業によって異なる部分はありますが、
基本的な部分を把握すれば、企業規模を問わず効果的に導入できます。
その際には、対象スタッフの業務量の対策・副業実施の評価制度・指示系統の明確化などのポイントに注意しましょう。