電子契約には、民法・電子署名法・電子帳簿保存法など、主に6つの法律が関係しています。
この記事では、それぞれの法律の概要と該当箇所・電子契約を導入する際の注意点などを解説します。電子契約の導入を検討しているご担当者さま、必見です。
電子契約を検討するときに、まず気になるのは以下の点ではないでしょうか。
そこでこの記事では、電子契約に関係する主な法律を6種類解説します。
最後までお読みいただければ、電子契約がどのようなもので、どういった扱いになるのかなどがおわかりいただけるはずです。
電子契約の導入を決める際に、ぜひ参考にしてください。
電子契約には、主に6つの法律が関係しています。
各法律の該当箇所について、文章を引用しつつご紹介しますので、ひととおり確認しておきましょう。
民法には、契約が成立する方法とその有効性について記載があります。
法律上、契約が成立したとみなすためのポイントは「一方が意思表示をして、相手が承諾すること」です。
くわえて「特別の定めがなければ書類がなくても問題ない」としていることから、実際に紙面でやり取りしない電子契約だけでなく、口頭・メール・電話でも有効性があると解釈できます。
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。 2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。 |
引用:民法
電子契約については、電子署名法において言及があります。
正式名称を「電子署名及び認証業務に関する法律」といい、電子契約の有効性・電子署名の定義などについて定めている法律です。
この法律を参照すると、本人による電子署名がされていれば、電子契約でも問題なく契約が成立することを読み取れます。
第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。 |
電子契約を正式な契約方法として導入していくには、各業界の契約に関連する法律もアップデートしていかなければなりません。
そこで必要になったのが「IT書面一括法(※)」です。
※正式名称:書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律
IT書面一括法は、書類の電子化へ対応できるよう、ほかの法律を一括して改正するために制定された法律です。
そのためIT書面一括法には、以下のように、各法律を改正した情報が記載されています。
第一条 証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)の一部を次のように改正する。 第四十条に次の一項を加える。 証券会社は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該顧客の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて内閣府令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該証券会社は、当該書面を交付したものとみなす。 |
引用:衆議院「法律第百二十六号(平一二・一一・二七)書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」
もちろん上記に挙げた金融庁の法律のほか、厚生労働省や農林水産省といった、ほか省庁の法律についても改正の記載があります。
たとえば、以下をはじめとして、49の法令において改正がされました。
<IT書面一括法による被改正法令例>
「電子帳簿保存法(※)」といえば「そういえば、最近テレビコマーシャルで耳にするようになったな」とお思いになった方も多いのではないでしょうか。
この法律も、電子契約に関わる法律のひとつです。
※正式名称:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
この法律は、納税者が感じている、国税関係帳簿書類の保存にかかる負担を軽くするために制定されました。
第一条 この法律は、情報化社会に対応し、国税の納税義務の適正な履行を確保しつつ納税者等の国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減する等のため、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等について、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)その他の国税に関する法律の特例を定めるものとする。 |
引用:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
実際にこの法律で書類の電子化について記載されている箇所は、以下のとおりです。
国税関係の帳簿において、紙面から電磁的記録による保存へかえられる点が明記されています。
すこし長くなりますが、該当箇所を引用します。
(国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等) 第四条 保存義務者は、国税関係帳簿(財務省令で定めるものを除く。以下この項、次条第一項及び第三項並びに第八条第一項及び第四項において同じ。)の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。 2 保存義務者は、国税関係書類の全部又は一部について、自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。 3 前項に規定するもののほか、保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。以下この項において同じ。)の全部又は一部について、当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。 |
引用:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
e-文書法(※)は、民間事業者が扱う文書の保存・作成・閲覧などを、電磁的記録でおこなってよいとする法律です。
※正式名称:民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律
なかには、先ほどご紹介した電子帳簿保存法となにが違うのかと疑問に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これらの法律における違いとして「対象とする書類の範囲」が挙げられます。
電子帳簿保存法は国税関連の帳簿にフォーカスした法律ですが、e-文書法は、厚生労働省により保存を義務付けられた文書全般が対象となっています。
第一条 この法律は、法令の規定により民間事業者等が行う書面の保存等に関し、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法(以下「電磁的方法」という。)により行うことができるようにするための共通する事項を定めることにより、電磁的方法による情報処理の促進を図るとともに、書面の保存等に係る負担の軽減等を通じて国民の利便性の向上を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。 |
引用:民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律
また法律のなかで登場する「電磁的記録」というのは、以下の方法により保存されたものを指します。
つまり、紙面の書類をスキャンして保存したものも電磁的記録となるのです。
現在紙で保管している書類を電子化することで、オフィスのスペースを広げ有効活用できるようになるでしょう。
〇作成された電磁的記録を民間事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等をもって調製するファイルにより保存する方法 〇書面に記載されている事項をスキャナ等により読み取ってできた電磁的記録を民間事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等をもって調製するファイルにより保存する方法 |
引用:「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」の概要
紙面で契約書をやり取りする場合は、印紙を購入して貼付することで、それぞれ印紙税を納めていたはずです。
しかし電子契約の場合は課税文書から外れ、印紙税を納める義務がなくなります。
それというのも、印紙税法に以下の記載があるためです。
第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。 |
引用:印紙税法
印紙税を納める義務があるのは「文書」つまり紙の書類に限られるため、電子契約を締結した場合は課税されません。
実際に、国会答弁でも以下のとおり名言されています。
事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである。 |
引用:参議院 質問主意書
電子契約を導入することで、ペーパーレス化・省スペース化・コストカット効果(印紙代)などが期待できます。
これにより得られるメリットは「手続きが簡単になる」「スピード感あるビジネス展開が可能になる」など、さまざまです。
詳しくは「テレワークに対応するなら電子契約が必須!メリットと注意点を解説」でご紹介していますので、気になる方はあわせてチェックしておきましょう。
しかし、電子契約の際は、以下のとおり注意すべき点も数多くあります。
自社オリジナルの電子契約書類を作ろうとすれば、専門家に相談して進めたりダブルチェック・トリプルチェックをしたりと、時間もお金もかかるはずです。
<電子契約書類を作成する際の注意点>
上記のことを一つひとつ社内でチェックして作成するよりも、電子契約サービスを利用したほうが、いっそうミスなくスムーズにすすめられるでしょう。
そこでおすすめなのが「Legal Sign」です。
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低コストで導入できるため、経費を圧迫しにくいのもメリットです。
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電子契約には、民法・電子署名法などさまざまな法律が関係しています。
複数の法律によりその有効性・手段などが規定されているため少々複雑になっているものの、法律が改正されたことで、より負担の少ない業務進行が可能になりました。
法律に関して理解を深め、電子契約を問題なくスムーズに導入できるよう、準備していきましょう。