トータルリワードとは?従業員エンゲージメントを高める新しい報酬戦略

働き方改革

働き方が多様化し、従業員が仕事に求める価値も変化しています。

 

「給料が高ければいい」という時代は終わり、成長実感や社会貢献、ワークライフバランスなど、より多面的な満足度が重視されるようになりました。

 

こうした時代の変化に対応する鍵が、トータルリワードです。トータルリワードとは、金銭・非金銭の両面から従業員に報いる新しい報酬の形。

 

この記事を読めば、変化に強い組織を作り、未来を担う人材を惹きつけるための戦略が分かります。

 

この記事の目次
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トータルリワードとは

トータルリワードとは、企業が従業員に提供するあらゆる報酬やメリットを包括的に捉えた考え方です。単に給与や賞与といったお金に関する報酬だけでなく、働きがいや成長機会、職場環境など、非金銭的な要素も含めて設計する点が特徴です。

 

大きくは、金銭的報酬と非金銭的報酬の2つに分かれ、これらを組み合わせて従業員の満足度やモチベーションを高めていくことが求められます。

金銭的報酬

トータルリワードにおける金銭的報酬とは、従業員の労働や成果に対して企業から支払われる直接的な金銭価値を指します。具体的には、以下のような報酬が挙げられます。

 

  • 基本給
  • 手当
  • 賞与
  • 退職金
  • インセンティブ
  • ストックオプション

 

このような金銭的報酬は、従業員の経済的な安定を保障するとともに、個々のパフォーマンスや貢献を評価する手段となります。

 

企業は市場の給与水準や自社の支払い能力、そして公平性を考慮しながら、競争力のある金銭的報酬制度を設計することが求められます。

非金銭的報酬

非金銭的報酬は、トータルリワードの中で金銭以外の形で従業員に提供される価値全般を指します。従業員の満足度やエンゲージメントを高める上で金銭的報酬と同等、あるいはそれ以上に重要な役割を担っているものです。

 

非金銭的報酬は多岐にわたります。例えば、法定の社会保険に加え、住宅補助、育児・介護支援、リフレッシュ休暇、健康増進プログラムといった福利厚生などがあります。

 

また、従業員のスキルアップやキャリア形成を支援する研修制度、資格取得支援など成長・キャリア開発の機会も含まれます。

 

さらに、良好な人間関係、心理的安全性の高い職場環境、柔軟な勤務時間やリモートワークといったワークライフバランス、それに加えて、仕事の裁量権や達成感、企業文化なども働きがいに関わる非金銭的報酬です。

 

これらは、従業員の多様化する価値観に応え、企業への帰属意識や働きがいを高めるために不可欠です。

中小企業がトータルリワードを取り入れるメリット

スマホに浮かぶ上昇グラフ

大企業との競争において、中小企業でもトータルリワードは有効な戦略です。金銭面以外での魅力を高めることで、人材確保や生産性向上など、多くのメリットが期待できます。

優秀な人材の獲得と定着率向上

多くの中小企業にとって、大企業と同水準の金銭的報酬を用意することは容易ではありません。しかし、トータルリワードの考え方を取り入れることで、限られた資源の中でも企業の魅力を高め、優秀な人材を獲得し、定着させることが可能になります。

 

給与や賞与といった金銭的報酬に加え、フレキシブルな勤務時間やリモートワーク導入による働きやすさ、資格取得支援や研修制度を通じた成長機会の提供といった非金銭的な価値を充実させるのです。

 

これらは、特に自身の成長やワークライフバランスを重視する人材にとって大きな魅力となります。従業員一人ひとりのニーズや価値観に寄り添った総合的な報酬を提供することで、「この会社で働き続けたい」という意欲を引き出せます。そうすれば、結果的に離職率の低下にもつながります。

 

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生産性の向上と業績への貢献

トータルリワードの導入は、従業員のモチベーションを高め、それが組織全体の生産性向上、ひいては業績への貢献に寄与します。

 

従業員が自分の働きや貢献が正当に評価され、多様な形で報われていると感じられれば、仕事に対する意欲や主体性が向上するはずです。

 

また、働きがいのある職場環境や良好な人間関係は、チームワークを促進し、創造的なアイデアが生まれやすい土壌を作ります。従業員の満足度が高まることで、顧客に対するサービスの質も自然と向上し、顧客満足度の向上、そして最終的な企業収益の増加という好循環を生み出すことが期待できるのです。

企業イメージの向上

従業員を大切にし、その多様な価値観に応えるトータルリワードに取り組む姿勢は、企業イメージの向上に大きく貢献します。特に中小企業においては「人を大切にする会社」「働きがいのある会社」という評判は、採用活動において大きなアドバンテージとなります。

 

求職者は給与だけでなく、その企業で働くことの意義や環境を重視する傾向が強まっており、魅力的なトータルリワード制度は優秀な人材を惹きつけるための強力な武器となるのです。

 

また、従業員満足度が高い企業は、地域社会や取引先からの信頼も得やすくなります。近年注目されるESG経営(環境・社会・ガバナンス)の観点からも、従業員への配慮は「S(社会)」の重要な要素であり、企業の持続可能性を示す指標として、金融機関や投資家からの評価にもつながるかもしれません。

トータルリワード導入のデメリットと注意点

チェックリストを使いながらトータルリワード導入を検討する場面

トータルリワード導入はメリットばかりではありません。制度設計の複雑さやコスト、効果測定の難しさといった課題も存在します。導入前にデメリットと注意点を理解し、対策を講じることが求められます。

制度設計・運用の複雑化

トータルリワードは金銭的報酬と非金銭的報酬の両面を総合的に整える必要があるため、制度設計そのものが複雑になりがちです。

 

どの要素を重視するか、従業員にどう伝えるか、運用ルールをどう整備するかなど、多方面に配慮が求められます。さらに、導入後も継続的な見直しや改善が欠かせず、担当者の負担が増えることもあります。

 

特にリソースの限られた中小企業では、形だけの制度にならないよう丁寧な設計と段階的な導入が不可欠です。

全従業員のニーズを完全に満たすことの難しさ

従業員の価値観やライフステージ、職種は一人ひとり異なり、報酬に求めるものも多様です。若手社員は成長機会や挑戦的な業務を重視するかもしれませんし、子育て中の社員は柔軟な勤務時間や育児支援を、ベテラン社員は安定した処遇や退職後の保障を求めるかもしれません。

 

トータルリワードはこれらの多様なニーズに応えようとするものですが、現実的にはすべての従業員の要望を完全に満たす制度を設計することは極めて困難です。ある従業員層にとって魅力的な施策が、他の層にとっては不要であったり、場合によっては不公平感を生じさせたりすることも考えられます。

 

そのため、制度設計にあたっては、従業員調査などを通じてニーズをできる限り把握する努力が必要です。しかし、最終的には企業の目指す方向性や全体の公平性を考慮し、優先順位をつけて制度を決定せざるを得ないという難しさがあります。

導入効果測定の難しさ

トータルリワードは従業員の満足度や働きがいといった、数値化が難しい側面を多く含むため、導入による効果を明確に把握するのが困難です。

 

離職率やエンゲージメントの変化などで一定の成果を確認できたとしても、それがトータルリワードのどの要素に起因するのかを正確に特定するのは容易ではありません。

 

定量評価と定性評価の両方を活用し、長期的な視点で効果を見極める必要がありますが、そこに手間やコストがかかる点は導入時の注意点といえるでしょう。

トータルリワードの導入ステップ

数人が手を合わせる様子

トータルリワードを導入するには、現状分析から制度設計、従業員への説明、導入後の効果検証まで、いくつかの段階を踏む必要があります。

 

ここでは、順を追って各ステップの内容を見ていきましょう。

1.  現状分析

トータルリワードを導入する前に、自社の現状を正確に把握することが必要です。現在提供している金銭的・非金銭的報酬の内容、従業員の満足度や課題、不満点などを調査・整理することで、どこに改善の余地があるのかが見えてきます。

 

また、競合他社との比較や業界水準の確認も行い、自社が採用市場や従業員維持の面でどの位置にいるのかを理解することが重要です。

 

この段階での分析が不十分だと、導入後の効果が限定的になってしまいかねません。

2. トータルリワードの設計

現状分析をもとに、企業理念や経営戦略と整合性のあるトータルリワードを設計します。金銭的報酬だけでなく、非金銭的報酬の内容も明確にし、どのような人材に何を提供すべきかを具体的に落とし込んでいくことが求められます。

 

制度の整合性や公平性を保ちながらも、従業員一人ひとりが価値を感じられるような設計が理想です。中小企業であっても、限られたリソースを最大限に活用する工夫を加えることで、オリジナリティのある制度構築が可能になります。

3. 従業員への周知

せっかく設計した制度も、従業員に内容や目的が正しく伝わっていなければ効果は限定的です。そのため、トータルリワードの導入にあたっては、社内説明会や資料配布、個別面談などを通じて、制度の趣旨や活用方法を丁寧に共有することが必要です。

 

従業員が自分にとってどのようなメリットがあるのかを理解し、制度に納得感を持つことが、導入成功のカギとなります。双方向のコミュニケーションを意識し、質問や要望にも柔軟に対応できる体制を整えておきましょう。

4. 定期的な効果測定と調整

トータルリワードは一度導入すれば終わりではなく、継続的な見直しが求められます。制度の運用状況や従業員の反応、業績や離職率などの指標をもとに、定期的に効果を測定し、必要に応じて内容を調整していきます。

 

特に従業員の価値観やライフスタイルは変化していくため、制度もそれに応じて柔軟に進化させましょう。。評価制度やフィードバックの仕組みも組み合わせながら、組織全体で制度を育てていく意識が求められます。

まとめ

本記事では、トータルリワードの基本的な考え方から解説しました。トータルリワードとは、金銭的報酬だけでなく、福利厚生や成長機会、働きがいといった非金銭的報酬も含めた総合的な報酬体系のことです。

 

これを導入することで、中小企業においても優秀な人材の獲得・定着、生産性向上、企業イメージ向上といったメリットが期待できます。

 

従業員の多様な価値観に応え、エンゲージメントを高めるトータルリワードは、これからの企業経営においてますます重要になるでしょう。自社ならではの制度設計を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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