領収書とレシート、日常生活でよく目にするこの2つの書類ですが、具体的に何が違うのか、意外と知らない方も多いのではないでしょうか。
経理業務や税務処理においては、それぞれの特徴を正しく理解し、適切に使い分けることが大切です。
本記事では、領収書とレシートの違いをわかりやすく解説し、経費精算や税務対応で失敗しないためのポイントをお伝えします。さらに、経理業務の効率化に役立つ便利なサービス情報もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
領収書とレシートの違いは何かと聞かれて、明確に答えられる人は意外と少ないかもしれません。実は、この2つの違いは記載内容にあります。
レシートとは、レジのレジスターから印字されるもので、店名、日付、購入品やサービスの品目、金額などが記載されています。
一方、領収書は商品・サービスの代金支払いを証明するための書類で、レシートの内容に加えて、「誰が支払ったのか」という宛名が書かれているのが一般的です。また、5万円以上の支払いの場合は収入印紙を貼る必要があり、領収書を作った人の住所と名前も必要です。
なお、海外では領収書・レシートともに「receipt」と呼ばれ、両者は同じものを指します。このことからも分かる通り、領収書の発行は日本特有の商習慣ということができます。
「領収書がないと経費にならない」と思っていませんか?実はレシートの扱いについて、税法や経理の観点からみると、意外な事実があります。
経費の精算には必ず領収書が必要であると思っている人も多いのではないでしょうか。しかし実は、レシートでも経費として認められる場合が多いのです。
税法上では、支払いを証明する書類として、支払い先、日付、金額、明細が記載されていれば十分とされています。そのため、必ずしも会社名が書かれた領収書である必要はありません。レジから発行されるレシートでも、これらの情報が含まれていれば、経費の証明書類として有効です。
実際、消費税法でも「請求書、納付書やこれに類する書類」という表現が使われており、領収書という言葉は特に指定されていません。つまり、法律上は領収書もレシートも同等の証明書類として解釈することができるのです。
「レシートでも経費として認められる」という話を聞いて安心した方も多いと思いますが、実は消費税法ではもう少し細かいルールがあります。
消費税法第30条によると、企業が支払った消費税を控除(取り戻す)するためには、原則として宛名の記載された証明書類が必要です。具体的には、書類には以下の情報が記載されている必要があります。
ただし、特定の業種については例外が認められています。コンビニなどの小売業、タクシーなどの旅客運送業、飲食店、駐車場など、日常的に利用する業種では、レシートでも十分な証明書類として認められます。これらの業種が発行するレシートは「適格簡易請求書(簡易インボイス)」として扱われるためです。
つまり、消費税の控除を受けるための経費精算では「原則として宛名が必要」ですが、業種によっては宛名のないレシートでも認められる、ということになります。
「手書きの領収書の方が正式な証明書類だから、より信頼できる」と思われがちですが、実は逆の場合もあります。
税務上、取引の証明には「取引の年月日」「取引相手の名前」「取引の金額」「購入した品物の名前」の記載が必要です。この点で、レジから自動的に発行されるレシートは、これらの情報がすべて印字されており、しかも後から内容を変更することができないため、非常に信頼性の高い証明書類となります。
一方、手書きの領収書には、いくつかの問題点があります。宛名が「上様」と書かれていたり、購入内容が単に「お品代」とだけ記載されていたりすることがあります。また、手書きであるため、金額や取引先を後から書き換えることが可能です。そのため、税務調査の際には筆跡の確認が必要になるなど、取引の証明書類としては不十分な点が出てきてしまいます。
このように、改ざんのリスクという観点からみると、むしろレシートの方が信頼性の高い証明書類といえるのです。
レシートは経費の証明書類として有効ですが、会社が領収書の提出を求めるケースが多い理由には、主に2つの現実的な理由があります。
1つ目は、飲食費の経費精算においての透明性の問題です。飲食店のレシートだけでは、それが本当にビジネス目的の会食だったのか、私的な飲食ではなかったのかを判断するのが難しいのです。
特に、高額な飲食費や頻繁な飲食費の計上がある場合、税務署から疑いの目を向けられる可能性があります。そのため、会社としては宛名入りの領収書を求めることで、ビジネス目的での支出であることを明確にしようとします。
2つ目は、レシートの保存性の問題です。レシートは感熱紙で作られているため、光、熱、水分に弱く、時間の経過とともに文字が薄くなったり、最悪の場合は完全に消えてしまったりする可能性があります。
法人の場合、レシートや領収書は法人税の申告期限から7年間の保管が必要です。この長期保存の要件を考えると、通常の紙に印刷された領収書の方が、文字の消失のリスクが少なく、より確実な証明書類として扱えるのです。
領収書やレシートを扱う際には、以下の4つの注意点があります。
保管期間についてです。領収書やレシートは税法で7年間の保管が義務付けられています。ここで注意が必要なのは、この7年という期間は発行日からではなく、確定申告の提出期限から数えるということです。
また、欠損金の繰越控除を利用する場合は、10年間の保管が必要になります。適切な保管をしていないと、税務調査で追徴課税の対象となる可能性があります。
なお、個人事業主の場合も、基本的には7年間の領収書・レシートの保管が必要です。
領収書とレシートの両方をもらえないことが多いのは、二重請求を防ぐためです。例えば、飲食店で領収書を依頼すると、レシートを回収してから手書きの領収書を発行するようにします。
会社によっては手書きの領収書でないと経費精算に使えないなどの独自ルールがある場合もあるので、事前に確認しておくことが大切です。
多くの企業では一定期間内なら再発行に対応してくれますが、断られることも少なくありません。その場合は、レシートや利用明細書での代替が可能か、または支払証明書の発行を依頼するなどの対応を検討する必要があります。
電子保存に関する注意点です。2020年の法改正により、新規の領収書やレシートの電子保存は比較的容易になりました。以前は領収書やレシートの電子保存に申請が必要とされましたが、法改正によりこれが不要となっています。
しかし、電子保存を開始するより前の書類を電子化する場合は、依然として税務署長の事前承認が必要です。
このように、領収書とレシートには明確な違いがあり、税務・経理上の取り扱いにも様々なルールが存在します。特に重要なポイントは以下の3つです。
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