「電子帳簿保存法に対応しないとまずい、とは分かっているけれど…」
「日々の業務に追われて、正直なところ後回しになっている」
多くの中小企業や個人事業主の方が、このような悩みを抱えているのではないでしょうか。
では、電子帳簿保存法に対応しないとどうなるのでしょうか。結論から言うと、青色申告の承認取り消しといった、事業の根幹に関わる罰則を受ける可能性があります。
しかし、ご安心ください。本記事では、そのリスクと対策について、専門用語を極力使わず、以下の点を分かりやすく解説します。
この記事を最後まで読めば、もう「どうしよう」と悩むことはありません。また、法対応を機に導入したいおすすめ電子契約サービスも紹介しています。
電子帳簿保存法に対応していないと、思わぬペナルティを受けるおそれがあります。税務上・法務上のトラブルにつながる可能性もあるため、放置は禁物です。
ここでは、具体的なリスクを整理します。
電子取引データの保存が適切に行われないと、青色申告の承認が取り消されることがあります。取り消しは、法律で定められた帳簿書類の保存義務を守っていない、と判断されるためです。
青色申告の承認が取り消されると、最大65万円の特別控除が受けられなくなります。また、事業で出た赤字を翌年以降の黒字と相殺できる「繰越控除」など、さまざまな税制上の優遇措置が適用できなくなってしまうのです。
こうした優遇措置がなくなると、納める税金の額が大きく変わり、会社の資金繰りにも影響が出てくるかもしれません。日々の正しいデータ保存が、安定した経営の土台になる、と考えておくと良いでしょう。
電子帳簿保存法に対応せず、帳簿や証憑の保存方法が不適切だった場合、税務調査で問題が指摘されるおそれがあります。電子取引やスキャナ保存に関して、保存要件が守られていないと、追徴課税の対象となることがあります。
2024年の改正では、電子データ上で仮装・隠蔽といった悪質な不正があった場合、通常の重加算税(35%)に加えて、さらに10%の加重措置が設けられました。
この加重措置は、スキャナ保存された書類や電子取引データが対象です。電子帳簿保存法に対応しないままデータ管理を怠っていると、帳簿の真正性が疑われ、通常以上の課税を受けるリスクがあるのです。
形式的な不備と思われがちな保存要件も、実は大きな税務リスクにつながるため、要注意です。
これまで見てきた税金の話とは別に、法人の場合、会社法にも関わってきます。会社法第976条では、帳簿や事業に関する書類を適切に保存しなかったり、事実と異なる記載をしたりした際のルールが定められています。
この条項に違反したと判断されると、100万円以下の過料が科されることがあります。これは行政上のペナルティで、刑事罰である罰金とは異なる性質のものです。
このように、電子帳簿保存法への対応は、税金の問題だけでなく、会社としての基本的なルールを守るという側面も持っています。企業としての信頼性にも関わる大切な取り組み、と捉えておくと良いでしょう。
電子帳簿保存法は、帳簿や領収書などの国税関係書類を紙ではなく電子データで保存することを認める法律です。対象となるデータの種類によって、以下の3つに分かれます。
これらの区分を簡単におさらいしておきましょう。
電子帳簿等保存とは、会計ソフトなどを使って作成した帳簿や決算書類を、紙に印刷せずに電子データのまま保存する方式です。帳簿を一から電子で作成している場合に該当し、法人・個人を問わず多くの事業者が対象となります。
保存する際には、可視性・真実性・検索性」といった要件を満たす必要があります。日付や取引金額などで検索できることや、訂正・削除履歴が残る形式で保存されていることが求められるのです。
要件を満たせば紙保存が不要となり、業務の効率化や保管スペースの削減にもつながります。既に会計ソフトを導入している事業者にとっては、比較的導入しやすい区分といえるでしょう。
スキャナ保存とは、紙で受け取った領収書や請求書などをスキャンし、画像データとして保存する方式です。紙の原本を電子化して管理することで、ペーパーレス化を進めたい企業にとっては有効な手段です。
保存の際には、受領後おおむね7営業日以内のスキャンや、改ざんを防止するためのタイムスタンプ付与など、細かな要件があります。また、解像度や階調などの読み取り条件も定められており、運用には一定の手間がかかるのが実情です。
ただし、スキャナ保存に対応することで、紙の保存義務を大きく軽減できるため、長期的には業務効率や保管コストの面でメリットがあります。
電子取引データ保存は、メールやクラウドなどでやり取りされた電子請求書や領収書といった取引情報を、電子データのまま保存する方法です。例えば、PDFで届いた請求書を印刷せずにデータ保存するような場合が該当します。
この区分は全ての事業者に義務化されており、2024年1月以降は例外なく対応が求められます。保存形式には「改ざん防止の措置」や「検索機能の確保」など、一定の技術的要件があり、単にフォルダ保存するだけでは不十分です。
未対応の場合は、青色申告の取り消しや重加算税などのリスクもあるため、最も優先的に対応すべき区分といえます。ファイル管理の仕組みを整え、確実な保存体制をつくることが肝心です。
電子帳簿保存法への対応は、罰則を回避するためだけのものではありません。業務の非効率化や信用の低下など、経営全体に影響するリスクが広がります。
電子データで受け取った請求書を、わざわざ紙に印刷してファイリングする。電子帳簿保存法に対応しないと、こうした非効率な業務フローが社内に残り続けてしまいます。
この作業には、紙代や保管コストだけでなく、後から書類を探す時間といった、見えない人件費もかかり続けます。
周囲の企業がDX化で生産性を上げる中、アナログな業務を続けることは、長期的に見て企業の競争力に影響を与えかねない、と考えておく必要があるでしょう。
法改正への対応状況は、今やその企業の管理体制を示す指標のひとつと見なされます。対応が遅れていると、取引先から「コンプライアンス意識が低い」という印象を持たれかねません。
中でも、電子取引を積極的に推進している企業から見ると、紙でのやり取りを求める会社は、スムーズな取引がしにくい相手と映ってしまうでしょう。
法改正にきちんと対応している姿勢を見せることは、当たり前のようでいて、実は取引先からの信頼を維持するための大切な要素でもあるのです。
電子帳簿保存法と、2023年10月から始まったインボイス制度は、密接に関連しています。メールなどで受け取る電子インボイスは、電帳法のルールに従って電子保存しなければなりません。
電帳法の社内体制が整っていないと、この電子インボイスを適切に処理できず、仕入税額控除の適用漏れといった経理上のミスを引き起こすリスクが高まります。
今後ますます普及が見込まれる電子インボイスにスムーズに対応するためにも、電子帳簿保存法への対応は、いわば不可欠な土台作りといえるでしょう。
電子帳簿保存法にまだ対応できていない企業や個人事業主でも、今から始めれば十分間に合います。自社の状況を整理し、保存要件とルールを正しく理解したうえで準備を進めましょう。
最初に行うべきは、自社でどのような電子取引が行われているかを把握することです。請求書や領収書をPDFで受け取っているケース、クラウドサービス上で取引が完結しているケースなどが該当します。
電子帳簿保存法では、電子取」として保存義務のあるデータの範囲を明確にしておく必要があります。紙に印刷して保存していたとしても、元が電子であれば対応対象となるため、形式だけで判断せず確認することが大切です。
社内の業務フローを見直し、どの取引が電子取引に該当するかを洗い出す作業が、全ての対応の出発点です。
電子帳簿保存法では、保存するデータが、真実性と可視性の要件を満たしていることが求められます。これらは、データの信頼性と検索性を確保するために必要な条件です。
真実性とは、記録内容が改ざんされていないことを証明できる状態を指します。タイムスタンプの付与や、訂正・削除履歴が残るシステムを活用するなど、技術的な対応が求められます。
可視性については、取引日付・金額・取引先の3項目で検索できるようになっていることが条件です。これらの要件を満たすかどうかは、会計ソフトや管理ツールの設定次第であるため、導入済みのシステムの確認も欠かせません。
要件を理解したあとは、実際にどのように保存するかを社内で明文化しておくことが必須となります。担当者の判断に委ねてしまうと対応にばらつきが出て、法的な整合性を保てなくなりかねません。
保存ルールの整備では、「誰が・いつ・どこに・どの形式で保存するのか」を明確にしておくことが基本です。加えて、保存対象となるデータの種類や、ファイル名の付け方まで統一すると、日々の運用が格段にしやすくなります。
対応後も、税務調査や内部監査に備えて、保存体制の記録や運用状況を残しておきましょう。形だけの導入にとどまらず、継続的なルール運用を見据えた仕組みづくりが求められます。
ここまで対応の必要性について解説してきましたが、電子帳簿保存法への対応は、単なる義務やコストではありません。正しく取り組めば、経営改善など多くのメリットがあります。ここでは、代表的な3つのメリットをご紹介します。
紙の書類を印刷・保管・管理するには、人手もスペースもコストもかかります。電子帳簿保存法に対応すれば、こうした紙の使用を抑え、費用を大幅に削減できます。
特に取引件数の多い企業では、紙の削減効果は年間を通じて見れば、相当なインパクトになるはずです。印刷費や郵送費、ファイルや保管棚といった備品コストも見直しの対象になります。
電子化によって省けるコストは一過性のものではなく、継続的な経費の削減となります。法対応というきっかけを、業務の見直しや効率化につなげる好機と捉えましょう。
紙の帳簿やファイルでは、必要な書類を探し出すのに時間がかかり、担当者の負担にもなりがちです。電子帳簿保存法に対応して電子データで保存すれば、日付や金額、取引先などの条件で検索ができるため、情報へのアクセスが格段に速くなります。
とりわけ、月次処理や税務申告のタイミングでは、過去のデータを即座に参照できるかどうかが業務スピードに直結するでしょう。
小さな効率化の積み重ねが、日々の業務全体の生産性向上に寄与します。情報を探す時間を短縮することは、企業にとって大きな時間的資産になります。
テレワークの普及にともない、紙の書類に依存した業務体制では限界が見えてきます。電子帳簿保存法に対応することで、帳簿類を社内だけでなく安全な環境で共有・閲覧でき、リモートでも業務を行えるようになります。
紙の原本を探しに出社しなければならないような状況は、柔軟な働き方を阻む要因となるものです。一方で、電子化された帳簿であれば、承認フローや確認作業も遠隔で対応でき、従業員の負担も軽減されます。
また、BCP(事業継続計画)の観点からも、電子データでの保存は災害時や緊急時における業務継続性を高める施策となります。
合わせて読みたい:テレワークに対応するなら電子契約が必須!メリットと注意点を解説
最後に、電子帳簿保存法に関して、多く寄せられる質問とその回答をまとめました。
こでは代表的な質問にお答えしますが、電子取引で用いられる電子契約の法律や仕組みについて、より詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
合わせて読みたい:電子契約の仕組みとは?書面契約と比べてどんなメリット・デメリットがあるか
はい、原則としてNGです。電子で受け取った請求書は、電子取引に該当するため、電子データのまま保存し、改ざん防止や検索機能などの要件を満たす必要があります。
いいえ、対象となるのは主に電子取引と、スキャナ保存の申請を行った書類です。紙で受け取った書類を従来通り保管することもできますが、電子で受領したものは電子保存が義務です。
税理士や顧問会計事務所に相談するのが基本です。自社で対応が難しい場合は、クラウド会計や電子帳簿保存対応のコンサルティングサービスも検討すると良いでしょう。
本記事では電子帳簿保存法への対応について、その流れやリスク、メリットを解説しました。法改正への対応は、単なる義務と捉えるのではなく、バックオフィス業務全体を見直す絶好の機会です。
ぜひ、業務効率化への第一歩として前向きに取り組んでみてください。
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