雇用契約書は電子化できる?対応させるための条件とは?
雇用契約書は、電子化・ペーパーレス化できる書類です。今回は「電子化できる書類の条件」「電子化のメリット・デメリット」などを解説します。雇用契約書を電子化する方法や電子化した際の影響についてお悩みの方は、ぜひご覧ください。 雇用契約の際に交付する雇用契約書や労働条件通知書は、電子化できる書類です。 しかしそれらの書類を電子化するにはどうすればよいのか、電子化するメリットやデメリットにはなにがあるのかなど、わからないことが多くて困っていませんか? そこでこの記事では、以下のことについて解説します。 雇用契約の際に必要な書類と法律について 雇用契約書を電子化するための条件 雇用契約関連の書類を電子化するメリット・デメリット 電子化する方法とポイント おすすめの電子契約サービス ぜひ最後までご覧になり、電子化に対応するべきか否かの判断にお役立てください。
雇用契約で必要な2つの書類と法律
雇用契約を結ぶときに必要な書類は、一般的に、雇用契約書と労働条件通知書の2つがあります。 これらの書類は、現在ではどちらも電子化が可能です。 まずはそれぞれの書類の役割と電子化に関連する法律について、引用を交えながらご紹介します。
1-1. 【労使合意の証明】雇用契約書
雇用契約書とは「一方が労働に従事し、それに対して相手方が報酬を与えると合意したこと」を証明するための書類です。 民法では雇用関係を以下のように定めており、雇用契約書を交わして互いが「約した」ことを証明します。 第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。 引用:民法 しかし実は、契約を結ぶ際に書面を作成しなくてはならないとする規定はありません。 民法でも労働契約法でも、双方が承諾・合意すれば契約が成立するとされており、口頭での約束だけでも問題はないといえるのです。 第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。 2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。 引用:民法 第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。 引用:労働契約法 そのかわり、書面を作成しなくてもよいことから、電子化された書類でも問題ないと解釈できます。 紙面契約と電子契約は同等の効力を持つため、よりスマート・迅速に契約締結書類を発行したい場合は、電子契約を検討しておきましょう。 電子契約の有効性については「電子契約に関わる法律にはなにがある?導入する際の注意点とは?」で解説しています。 気になる方は、ぜひあわせてご確認ください。
1-2. 【労働条件を規定する】労働条件通知書
雇用契約を結ぶときには、労働条件通知書を作成・交付しなければなりません。 労働条件通知書とは、労働者へ通知する義務のある情報を記載した書類のことをいいます。 この書類は発行することを義務付けられているため、違反すれば、30万円以下の罰金が科されます。 第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。 引用:労働基準法 第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。 一 第十四条、第十五条第一項若しくは第三項、第十八条第七項、第二十二条第一項から第三項まで、第二十三条から第二十七条まで、第三十二条の二第二項(第三十二条の三第四項、第三十二条の四第四項及び第三十二条の五第三項において準用する場合を含む。)、第三十二条の五第二項、第三十三条第一項ただし書、第三十八条の二第三項(第三十八条の三第二項において準用する場合を含む。)、第三十九条第七項、第五十七条から第五十九条まで、第六十四条、第六十八条、第八十九条、第九十条第一項、第九十一条、第九十五条第一項若しくは第二項、第九十六条の二第一項、第百五条(第百条第三項において準用する場合を含む。)又は第百六条から第百九条までの規定に違反した者 引用:労働基準法 労働条件通知書に記載しなければならない情報には、労働基準法で明記されている「賃金」「労働時間」「そのほかの労働条件」以外に、以下のことも含まれます。 「労働基準法」と「労働基準法規則」をあわせて参照する必要があるため、少々複雑ですが、一つひとつきちんとチェックしましょう。 <労働条件通知書に記載すべき情報> 契約について(契約期間・更新の基準・就業場所や就業内容) 始業や終業の時間・所定労働時間を超える労働があるか・休憩時間や休日・休暇・就業時転換に関することについて 賃金の決定・賃金の計算方法・支払方法・賃金の締め切りや昇給について 退職について(解雇の事由・退職手当が出る労働者について・退職手当の計算や支払の方法・支払時期について) 臨時の賃金・賞与・最低賃金などについて 労働者が負担する食費・作業用品などについて 安全・衛生について 職業訓練について 災害補償・傷病扶助について 表彰・制裁について 休職について 第五条 使用者が法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。 (中略) 一 労働契約の期間に関する事項 一の二 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項 一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項 二 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項 三 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項 四 退職に関する事項(解雇の事由を含む。) 四の二 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項 五 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項 六 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項 七 安全及び衛生に関する事項 八 職業訓練に関する事項 九 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項 十 表彰及び制裁に関する事項 十一 休職に関する事項 引用:労働基準法施行規則 また労働条件通知書については、電子化して交付できることが明記されています。 ファクシミリ(ファックス)やメールで交付できるため、雇用契約書とともに、オンラインで手続きを完結させられます。 電子化に対応すれば、紙面でやりとりするよりも、より便利・スムーズに手続きできるようになるでしょう。 法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。 一 ファクシミリを利用してする送信の方法 二 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下この号において「電子メール等」という。)の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。) 引用:労働基準法施行規則
雇用契約で必要な2つの書類を電子化する条件
雇用契約書・労働条件通知書ともに電子化できることは、ご紹介したとおりです。 しかしまとめて電子契約へ移行するためには、3つある条件をすべて満たさなくてはなりません。 電子化のためクリアすべき条件を、それぞれ解説します。
2-1. 条件1|労働者側が電子化を希望している
労働条件通知書を電子化するには「労働者本人が、電子化した状態で交付されること」を希望していなければなりません。 つまり、労働者側からの同意・希望が確認できなければ、紙面で交付する必要があります。 法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。 一 ファクシミリを利用してする送信の方法 二 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下この号において「電子メール等」という。)の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。) 引用:労働基準法施行規則 また同意する意思を確認する手段も、口頭ではなく書類に残すことが望ましいとされています。 雇用契約の際はトラブルが起きやすいため、「言った」「言わない」の水掛け論になるのを避けるため、書面で証拠を残しておきましょう。 則第5条第4項の「労働者が(中略)希望した場合」とは、労働者が使用者に対し、口頭で希望する旨を伝達した場合を含むと解されますが、法第 15 条の規定による労働条件の明示の趣旨は、労働条件が不明確なことによる紛争を未然に防止することであることに鑑みると、紛争の未然防止の観点からは、労使双方において、労働者が希望したか否かについて個別に、かつ、明示的に確認することが望ましいです。 引用:厚生労働省労働基準局「改正労働基準法に関するQ&A」
2-2. 条件2|本人のみ閲覧できる方法で送信する
労働条件通知書を電子化し、雇用契約書とともにオンラインで手続きを進めるためには、本人のみが閲覧できる方法で交付されなければなりません。 先ほど引用した労働基準法施行規則にも「受信者を特定したうえで情報を伝達する電気通信を使うこと」と明記されています。 よって電子化した書類をメールで送信するのは問題ありませんが、自社の共有フォルダへアップロードしたうえで共有するといった方法は問題となるため注意しましょう。
2-3. 条件3|紙に出力できる状態で交付すること
電子契約・電子化した書類は、紙面へプリントアウト(出力)できる状態で共有する必要があります。 こちらも労働基準法施行規則で明記されており、必須条件のひとつです。 たとえば「コミュニケーションを取りやすいから」といって、LINEの個別トークや鍵付きのTwitterアカウントでやり取りしても、法的に有効な方法だとは認められません。
雇用契約書を電子化するメリット・デメリット
雇用契約書・労働条件通知書の電子化には、さまざまな条件があり複雑になっています。 それらの条件をクリアして電子化に対応したとして、関係者にはどのような影響があるのでしょうか。 メリット・デメリットそれぞれについてご紹介します。
3-1. 電子化のメリット
雇用契約書・労働条件通知書を電子化することで、以下の3つのメリットが期待できます。 <雇用契約書・労働条件通知書を電子化するメリット> 効率化が期待できる コスト削減につながる 管理しやすくなる 書類を電子化すると「オンラインで契約が完結する」「郵送の手間がない」「本人確認書類をすぐ提出してもらえる」といったメリットがあります。 面談から契約までオンラインで一貫して対応でき、スムーズに物事を進められるでしょう。 契約締結にかかっていた時間が短縮され、効率よく契約を結べるはずです。 また、紙で契約書・通知書をやり取りする場合には、コピー用紙代・インク代・郵送費用などが必要不可欠です。 1件ごとにかかる費用はささやかなものでも、1年分を合計すればまとまった金額になります。 契約書を電子化すればそうした費用がかからなくなり、大幅なコストカット効果が見込めるでしょう。 くわえて電子化することで「契約書をデータベースで一元管理でき、更新時期や契約ステータスを把握しやすい」「労働者・店舗・本部間でスムーズに情報をやり取りできる」といった効果も。 契約に関する諸々の業務が簡略化・効率化されることで、ヒューマンエラーも防止しやすくなるでしょう。
3-2. 電子化のデメリット
雇用契約書・労働条件通知書を電子化すると、3つのデメリットがあります。 <電子化するデメリット> 関係する法律を理解しておかなければならない 契約相手へ電子契約について説明し、理解を得なければならない 操作ミスをした際の対応方法も考慮しておく必要がある 書類の電子化に際しては、保管方法をはじめとしてさまざまな規定があるため、法律の理解は必要不可欠です。 関連する法律については、あわせて「電子契約に関わる法律にはなにがある?導入する際の注意点とは?」を確認しておきましょう。 また相手に電子化について理解してもらうのは、同意を得なければ電子化した書類で契約を締結できないためです。 説明をしても電子化を拒否されれば、紙面で交付しなければなりません。 契約を結ぶ全員が電子契約に同意してくれる可能性は低く、紙と電子どちらにも対応できるようにしておく必要があります。 さらに、オンラインで契約する場合「そのつもりはなかったのに、誤って同意してしまった」と主張された場合の対処方法も考慮しておかなければなりません。 一度合意に至った契約の解除には「過去の契約を無効にする文章を追記した契約文書を新規作成し、新しく締結する」あるいは「訂正の覚書を締結する」必要があります。 いずれにしても新しい専用の書類が必要になるため、事前にフォーマットを用意しておくとよいでしょう。
雇用契約書を電子化する方法とポイント
雇用契約書・労働条件通知書を電子化するなら、電子契約サービスを活用するのがおすすめです。 電子契約サービスなら、初期費用・月額料金・ファイルごとの料金が必要なものの、スムーズに電子化に対応できるでしょう。 ただし、現在ではさまざまな電子契約サービスが登場しています。 それぞれ以下の点が異なるため、ポイントをおさえて比較・検討し、使いやすい電子契約サービスを選ぶ必要があります。 初期費用や月額料金が発生するため、導入前に慎重にチェックしておきましょう。 <電子契約サービスのチェックポイント> 初期費用がかかる/かからない 本人確認方法はメール認証か電子証明か 機能・電子化に対応している書類のラインナップの多さ
雇用契約書を電子化するなら「Legal Sign」
雇用契約書・労働条件通知書を電子化するなら「Legal Sign」がおすすめです。 「Legal Sign」は初期費用なし・月額料金4,980円・1ファイル200円で利用できる電子契約サービスです。 上記の書類はもちろん、ほかにも秘密保持契約書・個人情報取扱書をはじめとしたさまざまな書類に対応しています。 SMSやメッセージを活用して書面のやり取りができる利便性のほか、電子証明や二段階認証を用いたしっかりとしたセキュリティを備えており、安心してご利用いただけます。 気になった方は、ぜひ「Legal Sign」をご確認のうえ資料をご請求ください。