経理代行と記帳代行の違いとは?知っておきたいメリット・デメリット
経理業務の効率化は、企業の成長にとって不可欠な要素です。
特に中小企業では、資源を最大限に活用し、コストを抑えながら業務の正確性を保つことが求められます。
そこで本記事では、混同されやすい経理代行と記帳代行について、その違いやメリット・デメリットについて説明します。
どちらが自社に適したサービスなのか、判断する参考にしてください。
経理代行と記帳代行の違いとは
まず記帳代行は、経理業務の中でも記帳に特化したサービスです。
会計ソフトへのデータ入力、帳簿の作成などが記帳業務に含まれます。
記帳代行は、日々の取引記録を正確に経理帳簿に記録することに焦点を当てており、特に日常の記帳業務が負担となっている企業にとって有効です。
次に経理代行は、記帳代行の業務に加えて、経理業務全般をカバーするより広範なサービスです。
経理代行には、記帳業務のほかにも、以下のような業務が含まれます。
- 給与計算:出退勤データの精査、残業時間や保険料の計算など
- 年末調整:毎月の給与から源泉徴収した所得税の精算
- 決算申告:決算書の作成、法人税の申告など
- 支払い・請求管理:振り込み、請求書の作成、入金確認など
このように経理代行は、記帳業務にとどまらず、給与計算や請求管理など、より複雑な業務も行います。
給与計算や請求管理が負担となっている企業には、記帳代行より経理代行サービスのほうが適しているでしょう。
料金面では、記帳代行はその業務範囲が限られているため、経理代行よりも安価で利用できます。
したがって、自社の経理部門で何が最大の負担になっているかを理解し、それに基づいて記帳代行か経理代行のいずれかを選択することが重要です。
経理代行に依頼できる業務
経理代行では、以下のような業務を依頼できます。
記帳代行を含む経理サービス
経理代行サービスでは、まず基本的な記帳代行の業務が含まれます。
これには会計ソフトへのデータ入力、帳簿の作成などが含まれ、日々の経理取引を正確に記録することが目的です。
さらに、経理代行サービスでは、基本的な記帳業務に加えて、以下のようなより高度な数値管理業務を行います。
- 精査作業
- 資料作成
- 請求書の発行とファイリング
- 決算書の作成と税務申告
経理代行には、精査作業として、支払いや入金の確認、領収書や請求書と現金出納帳の照合など、金銭的取引が正確に行われているかの確認が含まれます。
社内会議や経営分析に必要な資料作成も行います。財務状況の報告書、予算対実績の分析資料などは、経営層が意思決定を行うための重要な情報です。
また、請求書の作成、発行およびこれらの文書の整理、保管なども代行してもらえます。
さらに、税理士事務所が提供する経理代行サービスでは、決算書の作成や法人税の申告までを一括して依頼することが可能です。
振込・支払いの代行
経理代行サービスでは、企業が毎月行う振込や支払いの業務を代行できます。
取引先への支払いや従業員への給与振込などは、お金を取り扱う業務であり、ミスが許されない重要な作業です。
多くの企業では、これらの作業に相当な時間と労力が必要となり、多忙な時期には大きな負担になることがあります。
経理代行サービスを利用することで、このような振込や支払いの作業を効率的に行うことができるようになるでしょう。
経理代行サービスの担当者は、顧客から提供された請求書やその他の資料を基に「支払予定表(支払管理表)」を作成します。
この予定表には、支払いの詳細(いつ、誰に、いくら支払う必要があるか)が記載されており、これに基づいて期日までに振込作業を完了させます。
このように、経理代行を利用することで、企業は経理業務の効率化を図るとともに、ミスのリスクを軽減することができるようになるでしょう。
記帳代行に依頼できる業務
記帳代行では、以下のような業務を依頼できます。
会計ソフトの入力
記帳代行サービスの主な業務は、会計ソフトへの入力作業です。
企業が日々行う取引は、期末の決算書類を作成するために、帳簿に記録される必要があります。
企業から提供された領収書や請求書などの取引資料を基に、記帳代行サービスの担当者は、会計ソフトにデータを入力します。
このように取引の内容を正確に理解し、適切な勘定科目で仕訳するには、簿記の知識が必要です。
また、取引件数が多いほど仕訳数が増え、入力作業に要する時間と労力も増大します。
記帳代行サービスを利用することで、企業はこれらの毎月の経理業務にかかる負担を大幅に軽減することができるでしょう。
帳簿の作成
記帳代行サービスは、会計ソフトへのデータ入力に加えて、さまざまな種類の帳簿の作成も行います。
作成される帳簿には、以下のようなものがあります。
- 現金出納帳
- 預金出納帳
- 売掛金補助簿・買掛金補助簿
- 試算表
- 総勘定元帳
これらの帳簿は、税務申告に必要な決算書類の作成に役立ちます。
また、多くの企業では、経営上の財務情報をタイムリーに把握するため、また経理上のミスを早期に発見し修正するために、月次決算を行っています。
記帳代行サービスを利用することで、これらの月次決算を効率的に行えることでしょう。
経理代行と記帳代行のメリット
経理代行・記帳代行と、どちらにも共通するメリットについて紹介します。
人件費の削減ができる
記帳作業には、簿記や税務に関する専門的な知識が必要です。
また、書類整理、請求処理、入金消込みなど、経理業務は多岐にわたります。
このような業務を社内で行うためには、専門知識を持った人材の雇用が必要ですが、専門人材を雇用するには、高いコストがかかる上、新たな従業員の採用や教育には時間とリソースが必要です。
特に中小企業の場合、限られたリソースの中で人材を確保することは、大きな負担となり得ます。
こうした状況において、記帳代行や経理代行サービスを利用することは、コスト削減に大きく寄与します。
経理代行・記帳代行サービスを利用することで、専門人材を直接雇用することなく、必要な経理業務を外部のプロフェッショナルに委託することが可能です。
これにより、人件費や教育コストを削減し、企業はその他のコア業務や成長戦略にリソースを集中することができるようになります。
正確性な作業が期待できる
記帳業務や請求処理、入金消込み、振込業務など、金銭取引に関わるすべての業務は、正確であることが不可欠です。
これらの業務に誤りがあると、企業の財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
経理代行・記帳代行サービスを利用し、これらの業務を専門知識を持つプロフェッショナルに委託することにより、業務の正確性が大幅に向上します。
経理代行・記帳代行サービスの提供者は、最新の会計基準や税法に精通しているため、適切な方法で記帳や金銭取引を処理できるでしょう。
また、経理業務におけるミスは、適切な訓練と経験を持たないスタッフによって作業が行われる場合に発生しやすいです。
専門のサービスを利用することで、こうした人的ミスを減らし、業務の正確性を確保することが可能です。
退職のリスクに備えられる
経理代行・記帳代行サービスを利用することは、退職に伴うリスクを軽減する有効な手段となります。
中小企業では、退職者が出た際にすぐに適切な後任を採用し、効果的に引き継ぎを行うことが難しい場合があります。
特に、経理業務においては、マニュアルが不十分であったり、適切なトレーニングが提供されなかったりすることにより、引き継ぎがスムーズに行われないのは、よくあることです。
経理業務、特に振込業務のような重要な業務は、停止するわけにはいきません。
こうした中で、経理代行・記帳代行サービスを利用することは、退職に伴うリスクを軽減する有効な手段となるのです。
経理代行サービスを利用することにより、従業員の退職があった場合でも、業務の継続性が保たれます。
外部の専門家によるサポートを受けることで、経理業務の停止や遅延を防ぎ、業務を滞りなく遂行することが可能となるでしょう。
経理代行と記帳代行のデメリット
両者のどちらにも見られるデメリットについて説明します。
社内にナレッジが蓄積しない
経理代行・記帳代行サービスを外部に依頼することで、その業務に関する社内の専門知識が育ちにくくなる点が懸念されます。
例えば、記帳代行を外部に委託すると、会計ソフトの操作や試算表の作成といった具体的な業務スキルを持つ社員が社内にいなくなることが考えられます。
その結果、経理業務に関する全体的な理解が社内で不足し、経理に関連する意思決定や問題発生時に迅速かつ適切な対応が難しくなる可能性があります。
この対策をするには、一部の重要な業務や基本的な知識を社内で保持することが重要です。
基本的な会計ソフトの操作方法など、業務の核となる部分は社内での知識として保持し、定期的なトレーニングや教育を通じて社員のスキルを向上させるようにするとよいでしょう。
また、代行サービスを利用する際には、自社内での業務内容や業務フローを十分に理解し、どの部分を外部に委託するかを慎重に決定することが望ましいです。
これにより、業務の効率化やコスト削減のメリットを享受しつつ、重要な業務知識を社内に保持するバランスを取ることができます。
情報漏えいのリスクがある
経理代行・記帳代行サービスでは、企業の財務に関する機密情報を含むデータを外部のサービスプロバイダーに委託します。
これには売上、支出、給与情報、銀行口座の詳細、税務関連の情報などが含まれ、これらは企業にとって極めて重要な機密情報です。
この情報が外部に漏れると、企業の競争力や信頼性に損害を与える恐れがあります。
したがって、経理代行・記帳代行サービスを利用する際には、サービスプロバイダーの情報セキュリティ体制を十分に確認することが重要です。
どのような情報保護方針を採用しているか、社員のセキュリティトレーニングはどのように行われているかなど、多角的な視点からの評価が必要になります。
業務委託前には守秘義務契約を結ぶことが重要です。
これにより、委託先が情報を適切に扱うことを法的に担保し、万が一の情報漏えいに備えることができます。
リアルタイムで対応できない
会社の財政状態や経営成績は、迅速な経営判断を行うためにリアルタイムで把握することが重要です。
しかし、記帳代行サービスを利用する場合、その月の試算表を入手するのは通常、月末締めで処理が行われた後となり、早くても1ヶ月後になることが一般的です。
これに対して、自社で記帳を行う場合は、毎日の業績を帳簿で確認できます。
また、経理代行サービスにおいても、請求書発行などの業務を委託した際、何らかの間違いが発生した場合、代行業者がすぐに対応できるとは限りません。
これは、代行業者の業務体制によって左右されるためです。
したがって、会社規模が大きくなり、よりスピーディーな経営判断が必要になる場合などは、記帳代行や経理代行サービスではなく、自社での雇用に切り替えることが適切かもしれません。
まとめ
経理代行・記帳代行サービスを活用することで、中小企業は経理業務の効率化を図り、より重要な戦略的業務に集中することができます。
記帳代行は日々の取引の記録に焦点を当てたサービスであり、一方で経理代行はより広範な財務管理業務をカバーします。
両者が代行できる業務範囲の違いを理解し、経理についてどこまでの業務を依頼する必要があるのか明らかにした上で、適切なサービスを利用しましょう。
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