工事請負契約書を電子契約にすれば印紙代は不要?仕組みと導入メリットを解説

電子契約

工事請負契約を結ぶたびに発生する印紙代。「このコストを何とか削減できないか」「契約手続きをもっと効率化したい」と考えている建設業関係者の方も多いのではないでしょうか。

 

近年注目される電子契約なら、その両方を実現できる可能性があります。

 

この記事では、工事請負契約書を電子契約にした場合に印紙が原則不要となる理由から、導入メリット、サービスの選び方、電子契約を結ぶ流れまでを分かりやすく解説します。

 

この記事の目次
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電子契約なら工事請負契約書に印紙は不要?

契約書にサインをする様子

工事請負契約書を締結する際、紙で契約書を作成して押印すると、印紙税法に基づいて所定の印紙を貼る必要があります。

 

例えば、契約金額が1,000万円の場合、印紙税額は1万円にもなり、年間の契約件数が多ければその分、コストも大きくなってしまいます。

 

以下は、工事請負契約書における印紙の金額です。

 

契約書に記載された金額

印紙税額(印紙代)

1万円未満

非課税

100万円以下

200円

100万円を超え200万円以下

400円

200万円を超え300万円以下

1千円

300万円を超え500万円以下

2千円

500万円を超え1千万円以下

1万円

1千万円を超え5千万円以下

2万円

5千万円を超え1億円以下

6万円

1億円を超え5億円以下

10万円

5億円を超え10億円以下

20万円

10億円を超え50億円以下

40万円

50億円を超えるもの

60万円

契約金額の記載がない

200円

 

こうした印紙税の負担を軽減する手段として注目されているのが、電子契約の活用です。

 

電子契約とは、契約内容をPDFなどの電子データで作成し、クラウド上や電子契約サービスを通じて、当事者双方が電子署名を行う形式の契約手法です。

 

ポイントは、このような電子データのみで契約が完結している場合には、印紙税法上の「課税文書」に該当しないという点にあります。

 

つまり、工事請負契約書を電子契約で締結すれば、従来発生していた印紙代をゼロに抑えられるのです。

 

契約のやり取りをオンライン上で完結できるうえに、コスト削減にもつながるため、建設業をはじめ多くの事業者が導入を進めている理由のひとつとなっています。

 

合わせて読みたい【電子契約とは?】概要・メリット・デメリットをわかりやすく解説!

印紙だけじゃない!工事請負契約を電子契約に切り替えるメリット

契約書に押印する様子

印紙代の節約だけでなく、電子契約には業務効率や法令対応の面でも多くの利点があります。

コスト削減効果

電子契約の導入による最大のメリットは、やはり印紙税が不要になる点でしょう。特に契約金額が大きくなりがちな工事請負契約においては、印紙代の負担は決して軽くありません。

 

電子契約であれば、この印紙税が原則として発生しないため、直接的なコスト削減効果は大きいといえるでしょう。また、紙の契約書にかかっていた印刷代、インク代、契約書を郵送するための切手代や封筒代、契約書を保管するためのファイル代、倉庫スペースといった物理的なコストも削減できます。

 

これらの費用は一つ一つは小さくとも、積み重なれば相当な額になります。契約件数が多いほど、その削減効果はより明確に実感できるはずです。

契約業務の効率化

従来の紙ベースの契約では、契約書の印刷、製本、押印、封入、郵送、そして相手方からの返送待ち、内容確認、ファイリングといった一連の作業に多くの時間と手間がかかっていました。

 

電子契約を導入することで、これらの物理的な作業のほとんどをなくすことができます。契約書データをシステムにアップロードし、相手方に送信すれば、相手方もオンライン上で確認・署名が可能です。

 

契約締結までのリードタイムが劇的に短縮され、工事の早期着工にも繋がる可能性があります。

 

また、締結済みの契約書はシステム上で一元管理されるため、後から特定の契約書を探す際も、ファイル棚を探し回る必要がなく、検索機能で瞬時に見つけ出すことができ、管理業務も大幅に効率化されます。

コンプライアンスの強化

電子契約は、コンプライアンス、つまり法令遵守の観点からもメリットがあります。

 

電子契約では、電子署名やタイムスタンプが付与されることで、「いつ」「誰が」「どの文書に」合意したのかが電子的に記録され、契約の真正性や非改ざん性を担保しやすくなります。これにより、後々のトラブル発生リスクを抑えることが可能です。

 

また、契約書の検索性が向上することで、監査対応時の書類提出がスムーズになったり、保管期間の管理が容易になったりするなど、内部統制の強化にも貢献します。

 

アクセス権限の設定により、不正な閲覧や持ち出しのリスクを低減できる点も、コンプライアンス強化に繋がります。

 

合わせて読みたい電子契約に関わる法律にはなにがある?導入する際の注意点とは?

電子契約サービスの選び方

タブレットで電子契約に署名する様子

最適な電子契約サービスを選ぶに、導入コスト、セキュリティ対策、操作性の観点から解説します。

導入コスト

電子契約サービスの導入にあたっては、初期費用や月額料金、送信ごとにかかる費用など、トータルでのコストを把握することが大切です。

 

サービスによっては初期費用が無料の場合もあれば、特定の機能やサポートに追加料金が発生するケースもあります。料金体系は、月額固定制、ユーザー数や送信件数に応じた従量課金制などさまざまですので、自社の利用規模や頻度を予測し、最もコスト効率の良いプランを選定しましょう。

 

単に価格が安いだけでなく、印紙代や郵送費、管理コストの削減効果といった費用対効果を考慮に入れることが肝心です。

セキュリティ対策が万全である

電子契約サービスでは、契約情報という重要な機密データをクラウド上で取り扱うため、セキュリティ対策の信頼性は極めて重要です。

 

通信内容が暗号化されているか、不正アクセスを防ぐためのファイアウォールや侵入検知システムが導入されているか、データの保管場所や管理体制は適切かなどを確認する必要があります。

 

また、本人確認(認証)の仕組み、アクセス権限の適切な管理機能、そして電子署名や認定タイムスタンプによる契約の改ざん防止や真正性の担保といった、法的有効性にも関わるセキュリティ機能が実装されているかどうかも必ずチェックしましょう。

 

情報セキュリティに関する国際規格「ISO27001(ISMS)」などの第三者認証を取得しているかも、信頼性を判断するひとつの目安となります。

操作性が良い

どれだけ多機能なサービスでも、操作が難しければ現場での定着は進みません。特に契約業務に関わる人がITに不慣れな場合、操作性のよさは導入成功の鍵となります。

 

画面のレイアウトが直感的でわかりやすく、マニュアルを読まなくてもスムーズに契約を進められる設計になっているかは重要な評価ポイントです。また、スマホやタブレットでも操作しやすいかどうかも、外出の多い業種では利便性に直結します。

 

操作性が高ければ、取引先にもストレスなく署名してもらえるため、契約締結のスピードアップにも繫がります。デモや無料トライアルを通じて、実際の使い勝手を確かめてから選ぶのがおすすめです。

工事請負契約書で電子契約をする流れ

図面を使って工事契約の準備をする手元

実際に工事請負契約を電子契約で締結する際の流れを、3ステップで確認しておきます。

契約書の作成と電子化の準備

まず、通常通り工事請負契約書の内容を作成します。WordやExcelなどで作成することが一般的ですが、最終的には電子契約サービスで扱えるファイル形式、多くの場合PDF形式に変換する必要があります。

 

契約内容が確定し、社内での承認プロセスを経たら、PDFファイルとして保存します。この段階で、契約相手(発注者や協力会社など)の担当者の氏名、メールアドレスを正確に確認し、事前に電子契約で手続きを進めることについて合意を得ておくことが重要です。

 

相手方の理解と協力がなければ、電子契約は利用できません。

 

また、電子帳簿保存法に対応するためには、契約書データの保存ルールも明確にしておくとスムーズに運用が進みます。契約書そのものの作り方を変えるというよりは、紙からデジタルへの移行準備を整えるステップと考えると良いでしょう。

電子契約サービスにアップロード・送信

契約書のPDFファイルが準備できたら、利用している電子契約サービスにログインし、ファイルをアップロードします。

 

次に、契約相手の情報(氏名、メールアドレスなど)を入力し、自社の署名者と相手方の署名者を設定します。サービスによっては、署名する順番(例:自社担当者→相手方担当者)を指定したり、複数の担当者が並行して署名したりする設定が可能です。

 

また、文書内のどの箇所に署名してもらうか、署名フィールドを配置します。必要に応じて、契約に関するメッセージを添えることもできます。

 

全ての設定が完了したら、送信ボタンをクリックします。これで契約相手に署名依頼の通知メールが自動的に送信され、契約締結プロセスが開始されます。

署名・締結後の契約書管理

契約相手が電子署名を行えば、契約は正式に成立し、そのままクラウド上で保管されます。紙のようにファイリングや倉庫保管を行う必要はなく、検索機能を使って契約書を瞬時に探し出せます。

 

また、改ざん防止のタイムスタンプや、署名の履歴情報も自動で記録されるため、トラブル時の証拠としても有効です。

 

サービスによっては保存期間の設定や通知機能、更新契約のリマインド機能なども利用でき、契約書のライフサイクル全体を一元管理できます。

 

締結後の煩雑な管理業務が簡素化され、法令順守の体制も整いやすくなる点が、電子契約を導入する大きなメリットのひとつです。

まとめ

本記事では、工事請負契約書を電子契約にすることで印紙税が原則不要になる理由と、それに伴うコスト削減効果、さらに業務効率化やコンプライアンス強化といった多岐にわたるメリットを解説しました。

 

電子契約の導入効果を最大限に引き出すには、セキュリティや操作性、サポート体制などを考慮し、自社に最適なサービスを選ぶことが求められます。

 

もし、どのサービスから検討を始めるべきか、具体的な導入ステップについて詳しく知りたいとお考えでしたら、「リーガルサイ」のように、建設業を含むさまざまな業種への導入支援や運用サポートを提供しているサービスもあります。

 

一度、詳しい資料請求やお問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。

 

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