週休3日制のデメリットとは?導入前に知るべき7つのリスクと対策

働き方改革

働き方の柔軟性を高め、採用や定着に活かそうと週休3日制に注目する企業が増えています。

 

しかし、その導入には思わぬ落とし穴も。制度の選び方や運用を誤れば、かえって現場の混乱やコスト増を招いてしまうかもしれません。

 

この記事では、週休3日制の代表的なデメリットとその対策を整理し、導入を検討する上でのリスク認識と意思決定のヒントを提供します。

 

この記事の目次
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週休3日制とは

週休3日制とは、その名の通り、1週間の休日を3日設ける勤務形態のことです。従来の週休2日制に加えて休日が1日増えることで、従業員のワークライフバランス向上などを目的として、働き方改革の一環で導入が検討されます。

 

ただし、ひと口に週休3日制といっても、その運用形態は一律ではありません。増える休日1日分の給与や労働時間をどう扱うかによって、企業と従業員への影響は大きく異なります。制度を正しく理解するには、まずそのパターンを知ることが不可欠です。

 

多くの企業がこの制度に注目する背景には、単なる休日増加だけでなく、優秀な人材の確保・定着や、生産性向上といった経営戦略上の狙いがあります。次の章では、制度設計の根幹となる3つのパターンを詳しく見ていきましょう。

週休3日制|3つのタイプ

出勤ラッシュで混雑する通勤中の人々

週休3日制には、給与や労働時間の考え方によっていくつかのバリエーションがあります。制度を検討する上で、まず理解すべき3つの基本タイプを理解しておきましょう。

給与維持型

週の総労働時間を減らし、給与は従来の週5日勤務と同水準を維持する、従業員にとって最も理想的なタイプです。「1日8時間×4日」で給与は変わらない、といった形がこれにあたります。

 

しかし企業側は、労働時間が減る中で従来以上の成果を出す、つまり大幅な生産性向上が必須です。これが達成できなければ、実質的な人件費の増加が経営を圧迫するリスクを伴います。

 

そのため、業務効率が非常に高い一部の企業でしか成立が難しいのが実情であり、導入ハードルは極めて高いモデルといえます。

給与減額型

週の総労働時間を短縮するのに合わせ、給与も比例して減額するモデルです。週4日勤務になる場合、給与も従来の5分の4に設定するといった形が一般的です。

 

企業側は人件費を削減できるため導入しやすいですが、従業員は収入減という直接的な影響を受けます。そのため、生活への影響を慎重に見極めることが欠かせません。

 

一方で、育児や学び直し、副業など、収入より自由な時間を重視する多様な人材にとっては魅力的な制度となり、企業の採用力強化に繋がる可能性も秘めています。

総労働時間維持型

総労働時間維持型は、週の勤務日数を減らす代わりに1日の労働時間を延長し、トータルの労働時間を保つ制度です。例えば、1日10時間×週4日で、週40時間を確保するといった形式がこれにあたります。

 

この方式は給与や成果に影響を与えにくく、比較的スムーズに導入できるはずです。業務量を変えずに休みを増やすため、制度への抵抗感も少ないでしょう。

 

ただし、1日あたりの勤務時間が長くなることで、集中力の低下や心身の負担増といった課題が生じるかもしれません。特に接客業や現場業務などでは、実務との相性を十分に検討する必要があります。

週休3日制導入で企業が直面する7つのデメリット

歩くビジネスパーソンたちの街中スナップ

週休3日制は柔軟な働き方を実現する制度として注目されていますが、導入に際して企業が直面する現実的なデメリットもあります。制度そのものの善し悪しだけでなく、社内体制や業務設計との相性を見極めることが、導入成功の鍵となるでしょう。

① 勤怠管理と給与計算の複雑化

週休3日制を導入することで、勤怠管理や給与計算の運用が従来よりも複雑になります。出勤日数・所定労働時間・時間外労働の定義などが変更となり、制度全体の見直しが必要です。

 

特に給与維持型や労働時間維持型の場合、変形労働時間制などの仕組みとの整合性をとる必要があり、システム改修や就業規則の修正を伴うケースもあります。

 

こうした事務的な負担は、バックオフィス部門の業務量増加に直結します。制度設計と実務運用の間にギャップが生じないよう、事前に検証と調整が欠かせません。

② 顧客対応・取引先との連携への支障

企業が週休3日制を導入しても、取引先や顧客の稼働日が変わらないことを考えると、連携面での不都合が生じるおそれがあります。誰かが休んでいて連絡がつかない、といった事態は信頼性の低下にもつながりかねません。

 

特に対面対応や電話対応が多い業種では、顧客側のペースに合わせた体制を整える必要があります。対応できない日をどう補完するか、明確なルールづくりが求められます。

 

全社的な休業にせず部署ごと・個人単位で調整する場合でも、業務の引き継ぎやカバー体制に対する社員間の理解と協力が不可欠です。

③ コミュニケーション総量の低下

勤務日数が減ることで、チーム内外のコミュニケーション量が自然と減少してしまう点も見過ごせません。特に対面でのやり取りや雑談による情報共有が重視されていた職場では、業務の遅れや認識のズレが起こるリスクがあります。

 

チャットやタスク管理ツールなどを活用して補完する方法もありますが、形式ばった連絡だけでは関係性の希薄化を防ぎにくい側面があります。

 

情報の断絶を防ぐためには、週次のオンラインミーティングや報告フォーマットの整備など、意識的なコミュニケーション設計が求められるでしょう。

 

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④ 人件費の増加リスク

週休3日制を導入した結果、現場の人手が足りなくなり、代替要員の採用や外注対応が必要になるケースもあります。とりわけ、業務の属人化が進んでいる企業では、1人の休みが業務全体に影響を及ぼすことも少なくありません。

 

こうした補完体制を構築するには、人的コストや採用・教育の手間がかかります。また、労働時間を維持する前提で残業代が増加するケースもあるため、想定以上のコストが発生することもあります。

 

制度導入の効果がコスト面でのデメリットを上回るかどうか、導入前に綿密なシミュレーションを行うことが欠かせません。

⑤ 社員間の不公平感

週休3日制を全社一律ではなく一部導入する場合、「なぜ自分は対象外なのか」といった不満が生まれやすくなります。職種や部署によって制度の利用に差が出ると、公平性に対する懸念が高まります。

 

また、休暇の取り方が自由な制度では、同じ業務をする人どうしで勤務日数や負荷が偏り、社内に無言の圧力が生じることも想定されるでしょう。

 

公平性を確保するには、導入の目的と対象範囲を明確にし、制度の背景や運用方針を丁寧に説明することが不可欠です。

⑥ 長時間労働の常態化による離職リスク

勤務日数が減った分、1日の労働時間が増える「労働時間維持型」では、長時間労働が常態化する恐れがあります。結果として、心身への負担が増し、離職やモチベーション低下を招くリスクが指摘されています。

 

管理職など責任の重いポジションでは、就業時間後も対応が必要な業務が残り、実質的に拘束時間が長くなるケースが少なくありません。

 

この問題を避けるには、業務分担やタスク設計の見直し、業務効率化ツールの導入など、1日の負荷を適切にコントロールする仕組みが必要です。

⑦ 従業員のスキルアップへの懸念

勤務日数が減ると、OJTの時間や育成の機会も比例して少なくなるでしょう。若手や中途入社者にとっては、成長の機会が限られ、スキルの伸び悩みにつながる恐れがあります。

 

上司や先輩との接点が減ることで、フィードバックや助言のタイミングも逃しやすくなり、社内における人材育成の質が低下する可能性も見過ごせません。

 

この課題に対応するには、育成プログラムのオンライン化や、ナレッジ共有の仕組みを整備し、勤務日数に依存しない教育環境を構築することが求められます。

週休3日制のメリットの再確認

リラックスして景色を眺める女性

週休3日制は、導入コストや制度設計の複雑さといった課題から、慎重な判断が求められる制度です。しかし、その本来の目的や得られる効果に立ち返れば、企業・従業員の双方にとって大きなメリットをもたらす可能性を秘めています。

 

ここでは、週休3日制がもたらす代表的な3つの利点を、あらためて整理してみましょう。

ワークライフバランスの向上

週に3日の休みがあれば、家族との時間や趣味に没頭する余裕が生まれ、心身のリフレッシュもしやすくなります。オンとオフの切り替えがしやすくなることで、精神的なゆとりを持ちながら働けるようになるのです。

 

中でも育児や介護と両立したい社員にとっては、柔軟な働き方として高く評価されており、自己投資や副業など、収入よりも時間を重視する層からも支持を集めています。

 

企業側にとっても、従業員の満足度や定着率の向上が期待でき、人材の長期的な確保につながる好循環を生み出すきっかけとなるでしょう。

生産性の向上

「労働時間が減れば、生産性が落ちるのではないか」と懸念されがちですが、逆の結果をもたらすケースも少なくありません。勤務日が4日に限られることにより、従業員は時間内に仕事を終えようと、より集中して業務に取り組むようになるのです。

 

「この会議は本当に必要か」「この作業はもっと効率化できないか」といった意識が社内に芽生え、無駄な業務や形骸化した会議が自然と淘汰されていきます。

 

結果として、労働時間あたりのアウトプット、つまり時間当たり生産性が向上することが、国内外の多くの事例で報告されています。

働き方改革・イメージ向上

少子高齢化が進み、人材獲得競争が激化する現代において、週休3日制という働き方は、求職者にとって非常に魅力的に映るはずです。

 

優秀な若手人材や、多様な働き方を求める専門職人材を採用する上で、他社との大きな差別化要因となるでしょう。

 

「従業員の働きやすさを重視する先進的な企業」というポジティブな企業イメージが定着し、企業のブランディングにも貢献します。結果として、採用コストをかけずとも、優秀な人材が集まりやすくなるという好循環を期待できるのです。

【導入診断】本当に週休3日制を導入すべきか?

チェックマークをタップする手元と選択肢のUI

これまでのメリット・デメリットを踏まえ、最終的に自社は週休3日制を導入すべきか、冷静に判断する必要があります。以下の5つの問いに「Yes」と答えられるかどうかが、その試金石となります。

 

もし答えに詰まる項目があれば、それは制度導入前に解決すべき経営課題です。

導入の目的は、経営戦略と合致しているか?

なぜ週休3日制を導入するのでしょうか。単に「流行っているから」という理由では、困難に直面した際に頓挫します。「生産性を25%向上させる」「特定分野の専門人材を採用する」など、具体的な経営戦略上の目的と結びついていることが成功の絶対条件です。

「成果」で評価する文化・制度はあるか?

労働時間が短くなる以上、評価の軸を「時間」から「成果」へ移行させなければ、社員間の不公平感が生まれます。成果を正当に評価する人事評価制度は整備されているでしょうか。もしそうでなければ、制度導入と同時に、評価制度そのものを改革する覚悟が求められます。

顧客や取引先に不利益を与えない体制を構築できるか?

自社が休日でも、社外のステークホルダーは動いています。顧客からの問い合わせや取引先との連携に支障が出ないよう、具体的な対応フロー(休日ローテーション、緊急連絡網など)を構築できるでしょうか。事業運営に穴をあけない、という責任を果たせるか、見極めが必要です。

経営層は業務改革を断行する覚悟があるか?

週休3日制の導入は、無駄な会議の廃止や業務プロセスの抜本的な見直しといった痛みを伴う業務改革とセットです。従業員の反対や一時的な混乱が生じても、経営層が強いリーダーシップを発揮し、改革をやり遂げる覚悟がなければ、制度は形骸化します。

まずは試験導入から始められるか?

いきなり全社で導入するのは、リスクが高すぎます。まずは特定の部署やチームで試験的に導入(スモールスタート)し、課題を洗い出して改善サイクルを回せる体力と意思があるでしょうか。小さな成功事例を作ることが、全社展開への最も確実な道筋です。

まとめ

本記事では、週休3日制の導入がもたらすデメリットと、その対策を多角的に解説しました。従業員満足度の向上といった魅力的なメリットの裏には、人件費の増加や顧客対応への支障、勤怠管理の複雑化など、企業が直面する多くの経営リスクが潜んでいます。

 

重要なのは、週休3日制を単なる休日を増やす制度ではなく、生産性向上や評価制度の見直しと一体で進めるべき経営戦略と捉えることです。

 

安易な導入は失敗を招きますが、この記事で挙げたようなデメリットを把握し、対策を講じることこそが制度を成功に導く唯一の道といえるでしょう。

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